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8月12日(月)~8月16日(金)の見通し

■まず初めに流し読み

◆先週月曜は非常に激しい下落からスタートした。米国金利はショック時のような下落を見せ明らかに不況入りを警戒するような動きであったが、実際の米国経済は未だ堅調であり、また米国の中央銀行であるFRBには利下げやQT停止といった「金融緩和の手段」が残されている。

◆一方の日本株は日銀の利上げによる日米金利差の縮小、それに伴う円高が日本株市場を大きく荒らしていった。
日本株は円安と半導体銘柄の動向に左右されやすく、半導体銘柄の調整と円高がダブルパンチで来ることによりブラックマンデーを超える値幅分下落した、と解釈できる。
ただし日銀はこれから利上げ、すなわち金融引締めを行うスタートラインにあり、利上げ停止や利下げをすれば円安が昂進、日本株も恩恵を受けるが経済的にコストアップがひどくなるため、米国と全く異なり金融的に救い出す手段が限られていることに注意したい。

◆米国大統領選挙はいよいよ民主党から大統領候補としてハリス氏、及び副大統領候補としてワルツ氏がほぼ正式に確定した。
現在ハリス氏はトランプ氏を支持率において猛追し上回っている状態であり、このままいけば民主党がホワイトハウスを握る可能性が高まっている。
ところでS&P 500のパフォーマンスにて「現職の政党が勝利するかどうか」の統計で言えば、1月~3月、及び5月~7月の高い上昇率や比較的浅い調整などを考えると、市場は民主党が勝つことを初めから織り込んでいたように思える。
絶対ではないが、先週月曜に付けた瞬間的な下落は「当面の安値」として機能するシナリオには妥当性があると見られる。


◆今週はCPIなど物価指数関連の発表があるが、今までとは違い「米国経済がいまだ強い」証拠が求められている。
その観点では弱い数字であると相場が軟調となりやすく、10月あたりまではそのようなニュースや指標で一喜一憂する相場を見る。
また米国株は上昇すれどすぐに強気で買うには難しく、先週月曜の安値を目安とした横ばい相場を想定してゆっくりと買っていきたい。


■先週の振り返り

◆時経るごとに下落和らぐ1週間

先週は激しい値動きの中で相場がスタートしました。

日経225は-12%超え、S&P 500も-3%とベア相場入りしたのではないか?との疑念が市場を渦巻きましたが、特に米国のS&P 500VIX (恐怖指数) が瞬間的に前日比+181%となるまで市場がパニックしたことは衝撃的でした。

これらが起きた原因には7月後半から始まった「不況が来るのではないか」という漠然とした不安、いわゆるデフレ懸念が主に関わっていますが、その証拠としてそれまでの金利の安値を下に割った7月30日(火)から8月5日(月)のわずか5営業日で米国10年金利は最大-11.5%ほどまで急落しており、2020年のコロナショック時における-14%弱の下落と規模的にはさほど変わらないほど瞬間的なパニックに陥ったことがわかります。

米国10年金利の比較 (上: 2020年2月末、下: 今回)
今回は短期間で金利が急落したが「不況を懸念する動き」という観点から
2020年のコロナショックと似ている部分がある
ただし実体経済でそのような兆候は現状見られない

経済悪化時は特に雇用関係の統計に変化が出るため、今月初めに発表された雇用統計をよく見てみます。

失業率は4.3% (予想4.1%)、非農業部門雇用者数は+11.4万人 (予想+17.5万人) と雇用統計の中でも二つの重要指標が大きく悪化したことで一気に金利が下落、伴って株式も売られましたが、特に失業率は5%以上でおおよそ景気後退の可能性が出ると言われる中で大きく下回っており、市場の反応は明らかに過剰であったと考えられます。

この下落を後押ししたキーワードとして「サーム・ルール」が挙げられるでしょう
そもそもサーム・ルールの定義として「失業率の3か月移動平均 (今回は5月~7月分) が過去12か月の最低値 (今回は3.5%) から0.5%以上上昇した際に景気後退が示唆される」というものですが、この指標を考案したサーム氏は「景気後退を予想する目的で作成されたものではない」と明言しており、あくまでも経験的にそのようなルールが当てはまるにとどまるとしています。

 また失業率が4.3%と上昇したことは大きな衝撃をもって迎えられましたが、失業の理由ごとに分けた項目では「一時的解雇」が急増したことも無視できません。

一時的解雇が増加したひとつの理由に米国におけるハリケーン「ベリル」の被害から間接的に失業者が増加したことや、急増する移民が求職する間に失業者の計算に含まれてしまう問題もあり、失業率の上昇がこれからも継続するか?については一定の疑問が残る形となっています。

失業率を理由ごとに分けたヒストグラム
今回は一時的解雇の項目が増加しており上昇トレンドが継続するかは疑問
またこれから移民増加などで労働力人口が増加すれば
後ほど失業率が下落する要因にもなる
出典: マネックス証券

失業率以外にも指標を見てみれば、2020年のコロナショックにおける「雇用者数」および「小売売上高」も一度下落に転じている中、現在はどちらも下落に転じる様子を見せていません。
また先週発表されたISM非製造業 (サービス業) 景況指数も前回の48.8から51.4へと回復し、サービス業も未だ底堅いことで先週の強烈な下落を止めたことは記憶に新しいところです。

雇用者数・小売売上高・ISM非製造業指数 (2020年との比較)
純粋な雇用者数も一度下落に転じている2020年とは異なり健康
また小売売上高もISMサービス業景況指数も底堅い
指標が遅れて不況を示す問題はあるものの、先週の反応は
やや過剰なものだった

これら「雇用」「モノの消費」(小売売上高) 「GDPの大部分を占めるサービス業」(ISM非製造業指数) の3つが少なくとも未だ健康であることを考えれば先週の強烈な下落は過剰反応気味であり、仮にサームルールが適用されたとしてもそれを裏付けるほどの十分な兆候は出ていないことが見て取れます。

また米国では「利下げ」や「QT停止」という弾丸があるのも心強いと言えるでしょう。

利下げは政策金利の引き下げ、QT停止は現在FRBが国債を減らすのをストップする、すなわち金融的に引き締めるのを止めることが可能であり、どちらの選択肢をとっても株価にはプラスとなりやすいです。

加えて現在行っているQTは間接的に国債の供給を増加させる (=金利を上昇させる) 要因となります。
不況を意識した債券投資家がこれから国債を買う中で金利が下落する中、その動きにぶつける形でQTを継続すれば不況への懸念で同時に進む金利の低下を幾分か遅くすることが可能となります。

2020年のコロナショックでお金をばらまきすぎた分、現在はFRBにとって雇用も物価もバランスが良く、かつ過剰に持ちすぎた国債などの資産を減らすチャンスでもあり、金融の正常化が行えながらいざというときは景気支援もできる、まさに準備万端な状態であると言えそうです。

日米の金融政策立ち位置
米国は利下げとQT停止という二つの側面から経済を支援する準備が整っている
一方、日銀は国債を大量に保有する、インフレ率よりも政策金利が大きく下回るなど
金融的にはかなりいびつな政策を行っている (現在は正常化中)

一方で先週の日本で発生した株安に関して、日銀が行える株高への支援策は限られているのが現状です。

先日の日銀会合にて政策金利は0.25%へ利上げされましたが、現在の日本の物価 (CPI) が前年比+2%を超えている状態にて0.25%という非常に低い位置で据え置かれている事態は諸外国から見れば異様に映っていると思われます。

例えば米国は2022年初めに政策金利を0.25%~0.50%の範囲へ引き上げた際すでに物価は7.9%でしたが、これも2021年に物価が+2%を超えた状態でも利上げをしなかったためインフレが恒常化し、あまりの高インフレにおよそ1年間も株価が軟調となった経緯がありました。

また日本の株価は円安に連動する傾向がありますが、諸外国と比べ低い労働生産性が引き起こす低成長により「実際の株高」よりも「通貨安によって演出される株高」の側面が強く、ドル建てで見た日経平均は2021年の高値から未だ超えることはできていません。

今年2月にそれまでの最高値を奪還したのはあくまで円建ての話ですが、日本は資源国でも無いために円安を放置した株高ではいずれ輸入の面で経済を圧迫することとなります。

すでにマイナス金利から脱却後、過度な円安に終止符を打つために利上げをした日銀としては「利上げを止める」または「利下げする」という選択肢をとれば円安が再開するリスクを高めることになり、またその利下げも0.25%から0.10%へと小幅な選択肢にとどまることから、日本株における「今までの上昇シナリオ」と「程よい円高水準」を同時に達成するためには何らかのブレイクスルーが必要であると考えられます。

これらを総合して考えれば、今回の下落要因として日本では利上げ、米国では不況入り懸念とそれぞれ異なり、加えて米国では実際に不況入りの兆候が見られるわけでもない中で一時的なパニック売りが発生した点において日本市場よりも回復が早く、通常弱いとされる8月~10月の「当面の安値」を作ったという事実に留まったことはポジティブと捉えることが出来るでしょう。

他方、円安ブーストによって恩恵を受けていた日本株は日銀の利上げによって終了した円安とともに株高も帳消しになり、さらに日銀はこれからも利上げの方向に進むとされていることから国内の金利も上昇することで経済も株価も停滞する方向へ進む可能性が高いと思われます。
この件に関して日銀の内田副総裁は先週の講演にて「金融資本市場が不安定な状況で利上げをすることはない」や「当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続けていく必要がある」としており、円安を抑えながら株高も実現したい「欲張りセット」を叶えるために金融政策の選択肢が狭まりつつあることにはやや注意すべきだと見られます。

(参考) 日米における金融政策の方向性の違い
FRBは経済良し、金融良し、株価良しの三方良し状態に進んでおり
何かあっても十分な支援策が用意されている
一方の日銀は経済および株高を達成するために円安を受け入れざるを得ず
理想とする緩やかな円高と株高を達成するにはベースの成長率を上げなければならない

※今回の円高、及び日本株下落には円キャリートレードが深くかかわっているとの説が囁かれています。

円キャリートレードとは簡単に言うと「低金利の通貨でお金を借り、高金利の通貨で (国債などを通じて) 運用する」と表現できますが、それまで進んでいた「低金利の円で借り、高金利のドルなどで運用する」戦略が日銀の利上げにより通じにくくなり、加えて大量に溜まっていたポジションが瞬間的に逆回転したため強烈な円高になった、との説が主力となっています (実際に円キャリートレードの全貌を見ることは非常に難しいため確率の高い推測の域に留まりますが…)

いずれにせよ円安と日本株高はその性質上連動するため、日銀の利上げと米国の利下げによる「日米金利差の縮小」により少なくとも円安方向への圧力は以前より圧倒的に減少し、同時に日本株も嵩増しされた分が巻き戻った、とするのが最もらしいと考えられます。


◆大統領選のゆくえと米国株相場のシナリオ

米国大統領選挙も着実に進んでいます。

バイデン大統領が7月後半に撤退を決定したのち、当初は不評であった現副大統領のハリス氏が支持率でトランプ氏を猛追しており、またバイデン大統領よりもリベラル寄り (環境政策重視、中・低所得者層への支援、及びガザ地区への支援重視やアジア系という自身のアイデンティティも含め) であるためバイデン大統領が獲得できなかった人種層も取り込むことが出来ると考えられていましたが、直近の支持率ではハリス氏がじわじわとトランプ氏を追い抜き、銃撃事件があった頃から比較しても世論は民主党へ偏りつつあります。

例えば8日(木)に行われたイプソスの調査によれば、スイングステート (激戦州: ミシガン、ペンシルバニア、ウィスコンシン、ジョージア、ノースカロライナ、アリゾナ及びネバダの7州) における民主党・ハリス氏と共和党・トランプ氏の支持率が接戦状態になっているものの、全体としてハリス氏が若干上回ることが報告されています。

また政策の観点から見れば、中絶問題についてはハリス氏に軍配が上がる一方、移民政策についてはトランプ氏がより優れているとの傾向が各々はっきり出ています。

面白いことに米国民の関心として「インフレ問題」や次点に「移民問題」が挙げられる中、それぞれの項目で「トランプ氏がより良い政策を持っている」とハリス氏が押されていても支持率にそれが表れていないことから、実際の投票にて重視される点は「中絶問題」など別のところにあると推測されます。

米国・大統領候補の支持率 (8月9日時点)
バイデン大統領の撤退以降、ハリス氏が数々の調査にて支持率を上回る
一方のトランプ氏はテスラCEOのイーロン・マスク氏に莫大な補助をしてもらう関係で
反EVから発言が二転三転しており、一貫性が無くなりつつなる
出典: 538 (abc News)
米国民の最も関心のある問題 (上段) と各問題に対する各候補の優位性 (下段)
インフレや移民が上位に来ており、それぞれでトランプ氏が優位ななか
全体的な支持率はハリス氏が上回る傾向にある

ところでハリス氏は8月6日にミネソタ州知事であるティム・ワルツ氏を副大統領候補として指名したことが話題となりましたが、本命とされていたペンシルバニア州知事のジョシュ・シャピロ氏が選ばれなかったことがややサプライズとなりました。

今回の大統領選挙ではスイングステートと呼ばれる激戦州の中でも北東部の通称「ラストベルト」(Rust Belt) の支持を集められるかが一つの焦点ですが、シャピロ氏はラストベルトの一つであるペンシルバニア州知事でもあるため、同地の労働者層を取り込むのであれば圧倒的にシャピロ氏を選択すべき、とのコンセンサスが事前に醸成されていました。

そのシャピロ氏が選ばれなかった理由として彼のイスラエルひいきが関わっているとされており、自らもユダヤ系であるために反パレスチナ・親イスラエルに傾倒しており、ガザ地区での紛争を止めさせたいハリス氏にとって相容れない存在であることも確かでした。

大統領選における、共和党及び民主党の正式候補
左: 共和党 (トランプ氏、バンス氏)
右: 民主党 (ハリス氏、ワルツ氏)

その点、ハリス氏の相棒として選ばれたワルツ氏はシャピロ氏よりもスイングステートには弱いものの、意見の食い違いが発生しにくく歩幅を合わせやすいという意味で適任であり、これにて共和党から「トランプ氏・ハンズ氏」、民主党から「ハリス氏・ワルツ氏」のそれぞれペアが正式に立候補することが確実視されています。

激戦州と呼ばれるスイングステート7州
ラストベルトはかつて製造業で栄え、現在は経済が衰退した (錆びた) 北東部の州を指す
特にウィスコンシン、ミシガン、ペンシルバニアは激戦州かつラストベルトであり
この一帯の票を獲得できるとかなり楽に選挙を戦えるようになる
またその3州はほとんどの大統領選挙戦で民主党候補に入れており
民主党の色が青であることから「ブルーウォール (青い壁)」とも呼ばれている
出典: ジェトロ

さてハリス氏の支持率が上昇する中、投資家には「今年は民主党候補が勝利するのではないか」との憶測が既に広がっています。
現職のバイデン大統領は民主党所属であり、現職の政党が勝利する際はS&P 500のパフォーマンスが1年を通して安定的に推移するとされているためです。

大統領選挙年における、S&P 500のパフォーマンス
青: 現職政党が勝利 (今年は民主党)、オレンジ: 現職政党が敗北
今年を振り返れば、1月から4月初めまで非常に好調、その後の調整やサマーラリーまで
その軌跡が存外ぴったりと合致する
既に株式市場では「ハリス氏の勝利」を織り込み始めているかもしれない

上図は現職政党が勝利するか敗北するか?で分けたS&P 500の平均的なチャートですが、今回であれば民主党が勝利することで年初の数値を一度も割らずに堅調に推移していく様が見て取れます。
翻って1月~4月初め、5月~7月末までのハイパフォーマンスはチャートの形状及び伸び具合も似ており、今秋に来るとされる調整相場は既に先週月曜の時点で安値が確定した、との声も一部で出てきています

もし共和党候補が勝利するのであれば1月~3月に弱いパフォーマンスとなるところですが、まるでバイデン大統領が撤退し新たな強い候補が出てくることを予期したような動きをしています。

過信のし過ぎは良くありませんが、既にS&P 500が先週月曜に天井から-10%ほど調整したことを考えれば、案外大統領選挙の日までマイルドな横ばい相場が続くと考えるのも無理はないでしょう。


■今週の見通し

経済指標は強弱まちまちの結果が続く米国ですが、今週は消費者物価指数 (CPI) や生産者物価指数 (PPI) の発表が立て続けに行われる予定です。

すでに上でも述べた通り、現在の相場を下方向へ動かす主な要因は「不況入りへの懸念」ですから、例えばCPIの先行指標となりうるPPIにて予想よりも悪い数字が出れば多少相場も上下すると思われます。

また仮にPPIで良い数値が発表されたとしても14日(水)発表のCPIにて悪い数値が発表されれば評価が逆転することもあるため、市場の反応にはやや注意したいところです。

8/12~17の主要各国経済指標

その他、決算ではシスコシステムズ (CSCO) やウォルマート (WMT)、アリババグループ (BABA) やアプライド・マテリアルズ (AMAT) などが予定されています。

また日本では国内総生産 (GDP) の発表が15日(木)に予定されており、第一四半期で年率-1.8%と低成長に落ち込んだ日本経済がどこまで巻き返すかに注目が集まりそうです。

日銀は2%の物価目標を達成できる見込みが立ったとして利上げを敢行しましたが、もしGDPのマイナスが続くようであればそれは物価だけ●●●●が上がったことを指しておりあまり良いニュースではないでしょう。
今回発表される数値は速報値で後ほど修正される可能性が大いにありますが、それでも直近の日本株市場に少なからず影響を与えると見られます。


◆ナスダック100 (NDQ)

ナスダック100は一時急落しましたが、その後は堅調に戻し始めています。

ナスダック100

今週もこのような底堅い動きになると見られますが、あくまでも不況に入るかどうかは関係なく、市場にそのような不安が渦巻くようであればさらに下値を掘る可能性が高いことだけは留意したいです。
幸い米国株は冷静さを取り戻していますが、今週発表のCPIにて弱い数値が出ることによる下落には念のため注意が必要です。

今後の動きとしてはおそらく8月後半に開催されるジャクソンホール会議あたりまで底堅く、その後さまざまなニュースや指標、決算で一喜一憂しながら10月まで横ばいの展開になると見ています。
このため仮に上昇したとしても、もう一度くらいは下値を試す展開に見舞われると思われます。

想定レンジ: 17430〜19500


◆S&P 500 (SPX)

こちらも一時的なショックから立ち直りつつあり、先週月曜に出来た下落方向への窓を上方向へ埋める形、いわゆる窓埋めが発生した関係でひとまず安心できる状況となっています。

S&P 500

ただしこちらも同様、一度上に戻り再び下へ押しやすい環境にあることは留意したいです。
堅調な相場の動きを期待するのであれば多少の調整は仕方ありませんが、昨年11月~今年7月前半までの強烈なラリーを十分に休ませるにはまだ時間が必要だと考えられます。

想定レンジ: 5120~5470


◆米国10年債利回り (US10Y)

米国10年債金利は下落トレンドの中、いったん落ち着きを取り戻しています。

米国10年債利回り

これからも下落トレンドが続くと見られますが、直近の急落はやや先取りしすぎている動きであり、また現状「デフレ相場」(株価と金利の動きが比例する相場) の様相を呈す関係上、今週発表のCPIなどで強い数字 (物価が予想よりも高い数値であること) が出れば金利と株価が同時に上昇すると考えられます。

通常、株価と金利は反比例するとされていますが、現在の米国は不況を織り込む関係で株価と金利が比例しやすいことには気を付けたいところです。

想定レンジ: 3.66%~4.03%


◆香港ハンセン指数 (HSI)

香港ハンセン指数は以前の支持線である17200の水準を下に割ってから再びトライし、現在は抵抗線として機能し始めています。

香港ハンセン指数

中国圏の経済はすでにデフレが始まっており、中国の習近平国家主席への一極集権が際立ちながらも不動産不況などが未だ解決と言える状況に程遠いことなどから、引き続き長期投資は向いていないと思われます。

想定レンジ: 16000~17500


◆米ドル円 (USDJPY)

ドル円は円高方向へのオーバーシュートを挟みながら日銀の内田副総裁の発言もあり一時回復しましたが、現在は2023年年初から続く上昇トレンドライン (図中、右肩上がりの白線) を下に割っており、円安回帰になるにはそれなりのパワーが必要になりそうです。

米ドル円

引き続き「円安の終了・緩やかな円高」と見ていますが、ここからは米国金利が更に下落しなければより円高へ傾くことは難しいと考えられます。
9月利下げかつ経済もさほど弱くない現況では米国10年金利も下値が限られていると見られ、しばらくは1ドル141.6円付近 (先週の安値) を下限として狭い範囲で動くシナリオが最もらしいと思われます。

想定レンジ: 141.6~149.0


◆日経225 (NI225)

日経225は利上げ後に急落しましたが、チャート内で天井のサインとなりうる「拡大トライアングル」(図中、拡大する2つの線) の下側線が上値を阻む抵抗線となっており、ここを抜けるにはまたしてもパワーが必要になりそうです。

日経225

先週の日銀副総裁の発言にて「現在の水準で金融緩和をしっかり続けていく必要がある」としながら利上げや引締めも辞さない態度を別所にて示しており、日銀としては「建前は引締め・本音は緩和」の良いとこどりをしようとする態度がうかがえます。

ただし投資家としてはこの一貫しないメッセージに不信感を抱く向きもあり、また現実として既に利上げはされたことから、引き続き何かしらの株価を上昇させるドライブ要因、もといナラティブが無ければ上昇は難しいかもしれません。

想定レンジ: 31150~35850


◆原油 (CL1!)

原油は月曜日に一時72ドルを割りましたが持ち直しており、現在は緩やかながら上昇に転じています。

こちらも引き続き、8月以降の上下どちらかの急騰・急落に注意する戦略は変わりませんが、どちらかと言えば急落 (デフレ方向) に原油が振れる可能性が高いと見ています。

ただし中東情勢も緊迫し続けています。
ハマスのハニーヤ最高幹部がイランにて殺害された事件、及びレバノンのイスラム教シーア派組織であるヒズボラの幹部も同様に殺害されたとして、両者その報復をイスラエルへ行うとしています。

その中でもイスラエルは8日よりガザ地区の南部ハンユニスから攻撃を仕掛けており、同地域の大規模な戦闘がいつ始まってもおかしくない状態が続いています。

普段であれば反応しないマーケットもちょっとしたことで激しく変動する可能性がありますが、仮に中東地域での大規模戦闘の開始、それに伴う原油価格変動があるとすれば恐らく上昇方向へ飛ぶと思われます (低い確率ですが)。

その場合でも株式市場がぎくしゃくする理由に繋がりやすく、金利と共に原油価格は定期的にチェックした方が良いかもしれません。

想定レンジ: 70.0~83.0


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