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スタートアップの最初の成長期におけるスクラム採用の実践

* この記事はスクラム採用 Advent Calendar 2019の14日目です。

本記事の目的

採用に悩んでいる企業の創業者や経営メンバー向けに、特にスタートアップ企業を中心に採用を本格化する際に直面する問題の理解を助けることです。

サマリ

・スタートアップがスケールするには強い人材を短期に多数採用する必要。
・中途人材を多数・短期に採用する手法はこれまで日本になかった。
・スクラム採用は上記の達成に有効。
・実践上は①採用責任者の設置、②経営目標からの逆算に基づく採用、③真に優秀な人から「逃げていないか」を問い直し続けること、が重要。

問題設定

スタートアップ企業の成長フェーズにおける最大の問題が採用です。
10人の創業フェーズから、50人の成長フェーズに至るには(離職率0でも)40人を採用する必要があります。
私が働いている株式会社LegalForceもまさにこのフェーズ真っ只中ですが、大企業の採用活動と比べればこれがいかに狂気の沙汰かが分ります。

日本企業では依然として新卒採用が採用の大部分です。しかも多い場合でも採用数は毎年、全社員数の3~5%です。

スタートアップは展開速度にもよりますが、6~24カ月で全社員数の400%を採用せねばなりません。しかもその大部分が即戦力です。

大企業の新卒採用は「教育」が前提です。会社のバリューを「叩き込み」、真っ白な状態から自社色に染め上げていきます。したがって採用は「一定の基準を満たした人材を選抜する」という課題です。

しかし明日つぶれるかもしれない零細企業に「御社色に染まります」と言われても、情けないですが責任が取れません。そもそも弊社色などないこともあります。また「即戦力」といっても「インサイドセールス」「財務会計」「フロントエンドエンジニア」は全然違います。したがってスタートアップの初期採用は「一定の採用基準」でカバーできる範囲は狭く、むしろ候補者との対話の中からポジションも作りこんでいく側面が大きくなります。

自分で考え、会社にコミットする、ドメイン知識やスキルが豊富な人材を個別に、しかし短期に多数、採用しなければならない、これがスタートアップの採用の難しさです。しかも、多くの場合、金銭面で差別化ができないというオマケまで付きます。

私はスクラム採用はこの困難な目標を達成する有効な手段だと考えています。本稿では弊社におけるその具体的な実践についてお話しします。

スクラム採用とは何か?

スクラム採用の定義は、HERP社によれば下記の通りです。

現場の社員が採用に積極参加し、採用担当は現場がうまく動けるようにサポートする。

しかしこれだけを見てもいまいちピンときません。「積極参加」というなら大企業でも現場の社員がOB訪問に応じたり、説明会に参加したり、といったことは日常的に行われています。一方で「サポート」とありますが、では採用担当者は採用プロセスについて「必要があれば出ていきます」というスタンスでよいということなのでしょうか?

もちろんそうではありません。私は下記のように理解しています。

・採用責任者の指揮の下、全社員が一つのクロスファンクショナルチームの一員として人材の要件定義及び採用の過程に参加すること。
・各部門長は、採用計画の策定と達成に、採用責任者と連帯して責任を負うこと。

「計画・トップダウンは大事」「採用責任者は必須」その上で「プロセスにおいて全社を巻き込む」ことがスクラム採用だという考え方です。

これはHERP社の考え方と違う部分もあると思いますが、一つの考え方ということでご笑覧いただければ幸いです。

採用責任者を最初に採用する

「採用責任者の指揮の下」という部分は大事です。スクラム採用の元の定義には「採用担当者はサポート」とのフレーズがありますが、結局のところ大事なのは採用責任者と理解しています。そのことだけをずっと考えている1人の問題意識の深さには、たまに考える人は追いつけないからです。

これはつまりスタートアップが10人->30人を目指すときに10人の中に採用責任者がいなければならない、ということを意味しています

現場の声なき声を問う

また「各部門長は、採用計画の策定と達成に責任を負うこと」が大事です。現場のニーズは、刻々と変化します。一時点の現場の声をもとにそのまま採用すると、候補者と会社の双方が不幸になるリスクがあります。
たとえば、フロントエンドが足りないという声からフロントエンドエンジニアを採用したが、実際にはグラフィック出身のデザイナーにフロントエンドの工数感覚がなく、不要に難易度の高い仕様になっていた場合などが考えられます。この場合、より適切だったのは「webサービスの経験があるデザイナー又はプロジェクトマネジャーを取ること」です。

各部門長は、こうした問題を避けるために、自社のドメインで先行している企業を積極的にスタディし、いつまでにどの程度の組織規模を実現するか、を考える必要があります。採用責任者もまた、こうした情報を常に仕入れ、「本当に必要な採用か」「順番が間違っていないか」、現場に問い続ける必要があります。

働き「やすさ」に抵抗する

後から来た人が、自分の上司になる、自分よりも上のポジションに就く、ということには抵抗が生じます。これは当然です。創業メンバーはリスクを取って参加しています。後から来る人は相対的に取るリスクは低くなります。しかし、真に偉大な企業を目指すのであれば、常に自分よりも優秀な人を自社に迎えるにはどうするか、を考えなければなりません。私自身、自分よりも優秀な人が来たらいつでもCOOを降りる覚悟が求められます(当たり前です)。

このように常に「自社を今よりも理想に近づけるために、(現状をより働くやすくするため(だけ)ではなく)どんな人を採用するべきか」を問わなければなりません。このために採用責任者が果たす役割は大きいと思います。これが一番よく表れるのは、将来ビジョンを描く時ではなく、個別の採用面接の瞬間です。個々の局面で、妥協がないか、逃げがないか、を常に問い返すという意味で採用責任者は全てのプロセスに入り込むことが必要です。

おわりに

IT系スタートアップでは、広告を除けば、エクイティファイナンスによる調達はほとんどが人件費と家賃(とエージェントフィー)に消えます。採用は企業が行う最大の投資であり、それが正しい順番で正しく行われるかは事業継続上クリティカルです。採用 = 投資と考えると初期スタートアップにおける採用責任者は、大企業におけるCFOに匹敵する重要なロールです。

そのためにも、採用業務に全社員が協力することは必須であり、スクラム採用はそのための非常によいスローガンであると考えられます。一方でそれは採用責任者や部門長の責任を軽くするものでは全くなく、そこはしっかりやっていかなければならないなと思う次第です。

なお、本稿では既存メンバーのdevelopmentや、会社のビジョン・ミッションの話にはほとんど触れられませんでしたが、「スクラム『採用』アドベントカレンダー」ということでご容赦いただきたく願います。

今後noteでの発信も強化していく予定ですので、よろしければフォローしてやってください!またメインはtwitter( @takashi_kawato)なのでそちらもよろしくお願いします。

なお、LegalForceは引き続き全方位で絶賛採用中です。興味を持っていただいた方、ぜひ一度遊びに来てください。

特に、私と一緒に働いてくれるプロダクトマネジャープロジェクトマネジャーはすごく募集しています!!今日のテーマでしたが人事も募集しております。

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