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#4 男の育休:その目的や取得期間の考え方

まず、男の育休、どれくらいとるのがいいのだろうか。
5日間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、半年、1年、それ以上。

それぞれ考え方があるだろうし、夫婦間の収入×家庭・育児経営のバランス、分担にもよる。
私は、「6週間」とることにした。

取ろうとしたときの考え方、取得した感想(メリデメ)について書いていこうと思う。



1.そもそもの育休を取得した目的

男が育休を取ることの目的として、私が考えていることは、以下の2点である。

①妻の負担軽減:

まず、産じょく期間で、体がボロボロの妻の育児・家事負担を可能な限り減らして、体の回復と愛着の育みに注力できるようにしてもらうことである。

妊娠期間中に、自治体のパパママクラスに参加した際、出産後の女性に起きる急激なホルモンバランスの乱れを聞いたからである。

通常の生理のホルモン分泌量を20階建てのマンションとすると、出産時のホルモン分泌量はエベレスト級。そこから、出産後胎盤を出すことで、急激に分泌量が落ち込むらしい。

通常時のホルモン変化と妊娠時のホルモン変化
[出典:横浜の産み育てを考える会『産前産後の妻を守るためのガイドブック』]

これが世に言う「マタニティブルー」「産後うつ」「ガウガウ期」といったやつの物理的(医学的)要因である。いろいろと調べていると、これらに起因して悪影響が生ずる追加的要因は、
完璧主義になりすぎ(例えば、過度な母乳信仰。母乳をあげる前後、必ず体重を計測して、毎回母乳量を計算する、体重変化に一喜一憂するなど)」、
ワンオペ育児(体がぼろぼろなのに、育児も家事もすべて自分で(あるいはその負担が重い)」
といったことらしい。いかにこれを防ぐか、が夫には問われている。

このホルモンバランスの変化の影響は、出産直後のマタニティブルーは2週間ほどで、その後の影響は、2-3ヶ月がピークで、半年から1年で戻ると言われている。

だからこそ、この間、いかに家事、育児面での妻の負担を減らすか、がポイントだと考えていた。

最初の3ヶ月ほど、育児で一番大変なのは、授乳だと思う。
これには、母乳で育てるか、ミルクにするか、ハイブリッドにするか、これは色々考えもある。

完全ミルクにして、寝る時間を夫婦で明確に区切り、共倒れを防ぐ、というのも一つの考え方だし、おもしろい、良い考え方と思う。

一方、妻や病院、家族の考え方もある。母乳信仰は根強いし、科学的説得力も一定ある。

なにより、母乳を少しでも使う以上、出さないと母体に悪い(乳腺炎リスク)。

我が家では、結果として、母乳中心、ミルク補助利用にしている。
3週目からはほぼミルクを使っていない。結果、どうしても、授乳だけは、余人を持って変えがたし、という状況になる。

愛着の育み方でも、妻もとても熱い思いがある。

最低限、それ以外の負担は、基本的に夫である自分が負うことで、育児の一番大事なところである「愛着の育み」などに、お互いが対等に、取り組んでいく環境を作ること、これが男性育休、最大のポイントだと思う。

②パパ力を育むこと(パパとママが育児に対するプレゼンス、子ども(to&from)の愛着で、対等な立場になること)

我が家の場合、妻も私も実家は都会。でも、今住んでいるのは、実家からは飛行機などを駆使しないと来られない田舎。

当然、妊娠が分かった時点でまだ、里帰り出産も選択肢に上がった。

しかし、これについては、私からお願いして、こちらで産むことにしてもらった。

その理由は、
自分自身も、子どもの誕生時点から、子どもと自分双方の愛着を育みたかったこと
里帰りして帰ってきた場合、明らかに妻と自分とで育児スキルに差がつき、結果主従関係がうまれるおそれ(妻がなすことが正解になるため、それに従わないorそれができないと、役立たずの烙印を押されててしまうおそれ)があること
の2点である。

特に後者は、上の世代の男性陣は結構これに当てはまる気がする。結果、20年、30年経った時、妻から「あんたは子育て何もしてなかったくせに偉そうにするな」と言われるのだ。

何事も最初が肝心と思っていた私は、こういった観点で、パパ力をつけるための育休をとりたかった。これが、私にとっての、男の育休の目的、2点目だ。


2.私が「6週間」の育休とした理由

前提として、ここでいう育休とは、「産後の育児のために取得した休暇」を言っている。いわゆる育児休業給付金の対象となる狭義の育休ではない。いろいろ会社によって制度があるだろうし、十人十色だと思う。私の場合は、有休も組み合わせて、6週間+αとした。

その理由は、前述の「男の育休の目的」に照らして、以下の点のバランスで考えた。

①妻の体の回復の目処が最低限1ヶ月検診を過ぎれば見えるだろうと思ったこと

1ヶ月検診は、大抵生後5週間前後であるので、そこを一つの目処としていた。
妻のホルモンバランスのことを考えると、十分条件は3ヶ月から半年なのだろうが、次の仕事のことも考慮して、必要条件を5週+αと考え、妻とも話をしていた。

②子どもの愛着を育むパパ力を身につけるのに必要なのは「スタートダッシュ」、後に必要なのは、その後の育児マラソンへの円滑な移行と思ったこと


最初に1年間育休を取ったから、その後バリバリ仕事をしても愛着は育めるわけでもないのでは、と感覚的に思っていた。
子育ては、25年事業。先は長い。両親ともに、自己実現している姿を見せることも立派な教育。何をも犠牲にして育児というわけにも現実にはいかない。

だからこそ、スタートダッシュの一番大事なところ(妻との役割分担の中、妻が一番しんどい時期)に休みを取って、その後は、子どもとのコミュニケーションや家事をきちんとできるワークライフバランスに移行していく、その後のマラソンに移行する、それが大事と考えていたこと。

③仕事の都合

どうしても、担当プロジェクトの推進上、出産予定日の2ヶ月弱後までには職場復帰をしたかった(これは自分の仕事を通じた自己実現の観点)。
これは、物理的にキャリアを中断せざるを得ない女性、妻には大変申し訳ないが、我が家の家庭での話し合いの中で、そうすることにした。

私の会社における自己実現を完全に諦めてしまうと、将来的な収入、環境面も含めて、望ましくないと思ったからだ。

これらのバランスをとって、一ヶ月検診後+1~2週間というめどで考え、取得期間を「6週間+α(水曜日生まれだったので、切りを良くするために生後6週間+直後の木~日まで延ばした)」
とした。

3.「6週間の過ごし方(夫婦の役割分担)」の概要

詳細は、今後改めて別の記事で再整理し、書いていこうと思うが、私はとにかく、妻の体の回復のめどがたつまでの間は、これまでの家事負担のバランスが、夫:妻=3:7くらいだったのを、理想的には、夫(+家族/サポーター):妻=10:0くらいにしたい、というのが、育休取得の目的の最たるものだった。

また、前提として、最初は、とりわけ育児面が不安(夫婦ともに初めて)だったので、妻の実家のサポートがほしいと思い、最初の2週間は妻の母にこちらにきてもらって、一緒に育児・家事を行った。

ただ、育休取得時点から取り組もうと考えていたのは、以下の4点。
①食事の関係(料理、買い出し、洗い物)は、その一切を自分がやること(キッチンに妻や義母を原則入れないくらいの心構え)
②洗濯・掃除も基本的には自分がやること
③日中の沐浴、おむつがえ、ねかしつけ、コミュニケーション(絵本の読み聞かせなど)は、子どもとの愛着を育むものなので、夫婦で互いに様子を見ながら、一緒にやること
④夜間の対応(授乳、おむつがえ、寝かしつけ)は、授乳以外は、なるべく自分がやること(授乳後の寝かしつけやおむつ替えまで妻がやっていると、妻の寝る時間がほとんどなくなる)

実際にやってみると、それぞれ以下のような感じだった。
①食事の関係
 徹底した(やりきった)。料理スキル、家事スキル、家計管理スキルはかなり上がった。
②洗濯・掃除
 義母がいるうちは義母に一定やってもらった。その後は、妻と私が3:7くらい。
③日中の育児
 
これが一番不十分だった。最初の1ヶ月、赤ちゃんは、まだ表情があまりなかったり、コミュニケーションがあまりとれないので、いわゆる妻に嫌われがちな「ながら育児」(スマホ)が多くなってしまった(自分も睡眠不足になるし、社会から断絶されるので、思った以上にストレスがたまって、スマホに逃げる時期が結構あった)。
 ただ、4週目くらいから、絵本の読み聞かせへの反応(目で追う)が見えるようになってきて、そういう成長を感じられるのが幸せだった
④夜間の育児対応
 実際には、義母がいるうちは、3~4時ころまでは私が、4~8時ころまでは義母が、という分担で対応。義母が帰った後も、結局自分の体力のなさから、3~4時ころまで対応して、後は限界(睡眠)という感じだった。

4週目くらいになると、妻も私もこの生活に一定慣れ、また妻の体も(おそらくホルモンバランスも)一定回復してきたので、余裕も出てきた。

また、自分が想定し切れていなかったタスクも出てきた。
○内祝いの関係(お祝いをいただいた方への対応)
○育児を進める上で生じた課題への対応(買い物:インフラ整備)
○おむつの実質値上げを踏まえた育児資材の効果的な購入

ここら辺の話は、私は苦手分野で、妻にかなり依存してしまった。

4.6週間の育休のメリット/デメリット

まずメリットである。
①妻が一番肉体的につらい時期に、育児・家事負担の最大限の軽減はできたと思うこと。
私たちの場合、1ヶ月検診までは、妻の運転、子どもを連れた外出は基本的に避けよ、という指示だった。その中で妻は体もしんどければ、ストレスもたまる。

こういう状況の中、実際に6週間、3食はすべて自分が用意したし、栄養バランスや季節の野菜も考えて、バラエティに富んだ食事を提供できた自負はある。

私は、元々鍵っ子で、共働きの両親が帰ってこない間、自分で料理をしてなさいという教育を受けてきていた。このため、凝ったものは作れないが、レシピがなくても作れるレパートリーをいくらか持っているし、レシピを見れば大抵のものは一定レベルで作れる。元来料理好きである。

一方で、結婚してからは、仕事がブラック目(時期によっては毎日2~3時まで仕事をするような仕事)のため、平日は完全に妻に頼り切り、土日にたまに料理をする程度だった。家事についても、洗濯や片付けはそれなりにやっていたが、それでも妻に依存していた。

それを、育休取得期間は、ほぼすべて妻にさせなかったので、いわゆるマタニティブルーのようなことに妻はならなかったし、現時点で産後うつの兆候もない。これは本当に良かった。最大の成果だと思う。

②育児スキルは、相当程度ついたこと。
おむつがえ、お風呂、寝かしつけ、コミュニケーション(絵本の読み聞かせなど)は、妻と一緒にできたし、一人でもできるスキルは十分に身についた。里帰り出産をさせていたら、この状態の妻が家に帰ってきて、自分は何も分からない、ということになっていたと思うと、ぞっとする。
妻とも、育児についての信頼関係が育めた実感があり、よく2人から3人になったときに陥りがちな、”主従関係への移行”でなく、育児も含めて”対等な関係”への移行が円滑ができたと思う。

③子どもの成長をずっと見ていられたこと。
たった6週間でも、すさまじい早さで成長していることを実感できた。

「目を開けるようになったな」
「おっぱいを飲む量が増えたな」
「睡眠をまとまって、一定間隔でとれるようになったな。」
「声がけに少しずつ反応するようになったな」
「目で(絵本や親の顔、おもちゃなど)を追うようになってきたな」
「首の筋力が少しずつついたな」

だんだんと、おむつ替えをするときのおむつの重さ(おしっこやうんちの量)が増えていくのも分かる。ずしっとしているときの「おぉ~」という感動。これはたまらく幸せだ。
これらを見られるだけでも、育休は数日でも、数週間でもいいから、絶対に男性は取った方がいい。

次に、デメリットである。

①成長をゆっくり見守るには時間が短い
とある育児書によれば、
赤ちゃんが笑うようになるのは2ヶ月以降
・首が座るのは3~4ヶ月以降
・寝返りは5~6ヶ月以降
赤ちゃんともっともっとコミュニケーションがとれるようになるのは、2ヶ月目以降のことである。欲を言えばもっと休んで一緒にいたかった。

②妻の体も本来的には十分に回復していない。必要な育児スキルもさらに増えてくる。
上述のとおり、出産によるホルモンバランスの変化の影響は、2-3ヶ月がピークで、半年から1年。

育児スキルという意味でも、離乳食は自分でもこだわりたいが、それが始まるのも5~6ヶ月目から。

2~3ヶ月以上、できれば半年とれるのが理想だと思う。

最後に注意点である。
○最初の1ヶ月は、夫婦ともにストレスがかなりかかること
どんなに頑張っていても、夫婦ともに寝不足になる。
二人とも社会から隔離され、社会人としての焦燥感は募る。

私のように短期で育休を取る場合の特徴もあるかもしれない。
この場合、プロジェクトを、一定期間だけ、中途半端に人に任せることになる。このため、完全に仕事から離れられていたかというと、実はそうでもなく、電話がかかってきたり、あるいは自分も週に2~3度は仕事の状況のチェックをしていた。
この中で、スタックしているプロジェクトの内容などが仮にあったり、あるいは、他の人の活躍している様子をSNSで見ると、自分はここで(職業人として)立ち止まっていて大丈夫か、という気分になって焦ってしまう。
エイヤで休めるなら、長期での方がいいかもしれないし、もし自分として大事にしているプロジェクトがあるのなら、どうバランスを取るのか、よく考えた方がいい。

また、妻の方は、基本的に、家からそもそも出られない。(うちは田舎なので、車がないと移動できないが、病院から、寝不足なので運転するなと言われていた)
子どもと家に閉じこもっている状況は大きなストレスである。

こういう状況で、どんなに互いに尊重しても、必ず衝突や軋轢は生ずる。これはしょうがないこと。仮に、長く一緒にいることでお互いに良くない関係性になってしまうのであれば、1ヶ月取って、復職して、また1ヶ月取る、とか、一定の柔軟性もあってもいいと思う(もちろん職場との関係性もあるが)。

以上、6週間の期間の考え方、目的、振り返りなどをつらつらと書いた。少しでも、これから育休を取ろうとするご家族の参考になれば嬉しい。

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