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013 石井明美「JOY」(1987年)

作詞:ちあき哲也 作曲:筒美京平 編曲:戸塚修

「CHA CHA CHA」の人と呼ばれるのは仕方ない。活動が長続きしなかったのも仕方ない。それでも、1発屋とは呼びたくない何かがあるのは、この曲があるからでしょう。

少女の時代を過ぎて、少しお姉さんになったくらいの人たちがこぞってカラオケで歌ったと言われるこの曲。男のわがままを赦しつつも、そこには自分でその道を選んだという主体性がある。まだまだ女性は男に従属するものだというような旧い恋愛感から、ようやく女性の自立が謳われるようになった時代。そういう世界観は一足先にロックが歌っていたけれど、歌謡曲の世界でもそういう歌が現れ始めました。自立した女の強がり的な別れ方を描いたこの曲は、ちょっと精神的に背伸びをしたい女子たちの心を満たしたに違いありません。

曲も分かりやすかった。京平さんのメロディは鼻歌で作ったかのようにあっさり目なのに、程よく込み上げ、覚えやすい。べースラインがきれいに下降していく分かりやすいコード進行。次の展開が読める曲って歌いやすいんですね。しかも、切ないメロディなのにリズムがしっかりあることで、バラードのようにベッタリと感情に流されることもない。自立した大人の女性の歌ですから、取り乱したり、情に流されたり、情念がこもったりしてはいけないのです。あくまでもスマートに、クールに、表向きはそう振る舞っていたい。

アレンジはもう一工夫欲しかった気もしますが、わかりやすさに徹したことがこの曲の人気を根強いものにしたのかもしれません。


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