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038 イルカ「なごり雪」(1975年)

作詞・作曲:伊勢正三 編曲:松任谷正隆

情景が浮かぶ、言葉がそのまま感情として伝わってくる。
力のある曲は軽々と時代を超えていくんだなぁ、と思った。

元々は伊勢正三がかぐや姫時代に書いた曲で、かぐや姫のアルバム『三階建の詩』(74年)に収録されていたもので、カントリー調の軽やかなアレンジがされていた。

対して、イルカのカヴァー版(伊勢はイルカに"あげた"と言っている)は松任谷正隆がアレンジ。マンタさんのことだから、おそらくヘッドアレンジだと思うのだが、実にソウルフルでリズムが重い。それがイルカのハスキーな声と実によく混ざり合っている。バッキングというより"混ざってる"んですよ。

特にドラムが素晴らしくて、1音を長〜く取って、それが歌詞の抒情性を後押ししている。サビのところでは、ヴォーカルを見事に下支えしてるんですね。何と歌うドラムなのだろうか。こんなのを叩くのはたぶんポンタさん。でも、マンタさんってことは林立夫かな?とも思って調べてみました。したら、こんなメンバーでした。

キーボード:松任谷正隆
エレキ・ギター:鈴木茂
アコースティック・ギター:吉川忠英
ベース:宮下恵補
ドラムス:村上秀一

ポンタさんでした。これ、ポンタさんの歌伴の最高傑作ではなかろうか。

鈴木茂さんのギターも素晴らしいんですよ。ダブル・ストップの1音スライドやそこにハンマリングやプリングを絡めたフレーズは、ソウルの歌伴の定番。これは譜面には書けない、完全にアドリブですね。ただ、この時代にこれをやってた人って、鈴木茂と大村憲司くらいでしょう。タイミング的に、もしかしたらグラディス・ナイト&ザ・ピップスの「夜汽車よジョージアへ」あたりの影響を受けてるのかな?なんて勘繰ってみたり。

それにしても、伊勢はかぐや姫時代には2曲しか作曲しなかったのに、その1曲がこれで、もう1曲は風のデビューシングルとなった「22才の別れ」で、いきなり1位を取るんだから、ものすごい才能ですよね。

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