サルでもわかるNISA講座 その7 「NISAでの投資に財産三分法は有効(必要)か?(アセットアロケーションの話)」

さてさて徐々に各論的に投資対象の選定の議論をしなきゃだね。先日「NISAの投資で債券を買った方がいいの?」って聞かれて、「その必要はないな。リターンが低すぎてタックスメリットがないから」って答えたんだけど、その人は財産三分法みたいな話を聞いたんだろうな。資産(アセット)運用では何に投資するか(アロケーション)が重要なんだけど、その前にもう少し投資の基本の話をしとこうかな。最後は自分で納得して投資しなきゃだからね。

これまで「リスク」って何度も出てきたけど、投資においてリスクの正体は「価格の変動性」のことなんだな。値段が上がったり下がったりする度合いの大小のこと。テクニカルタームでは「ボラティリティ」って言います。物によって値段の上がり下がりの度合いが違うのは分かると思うけど、値段が下がる方向だけではなくて上がる度合いが高くても「リスクは高い」というのがちょっと一般的な感覚とは違うかな。ボラティリティが一番低いのは現金(キャッシュ)。タンス預金が気付いたら増えてたなんてことはない(誰かが取って減ることはあるかもだけど)。「価値が変化しない=リスクが少ない」ってことなんだけど、現金は「ゆるやかにそして確実に損をする投資」だな。ちょっとそれも話しとこうか。

お金と物の価値の関係で、前者が強くなることを「デフレ」、後者が強くなることを「インフレ」って言います。で、バブル以降日本は長く物が値上がりしないデフレを経験してきたから、「タンス預金が一番安全だな」なんて発想が出てくるけど、例えば今100万円でできる買い物が、20年後に同じ100万円でできますか?って時に「うーん、値段が上がってたらできないかもな」というのは分かるよね。それがインフレってことなんだけど、自分はこの将来、世界的にインフレ傾向は強くなるイメージを持っている。それはロシアのウクライナ侵攻やイスラエルのガザ侵攻を見ると、これから世界は過去と比較して平和な状況じゃないだろうから。物を安く作るためには、原料を安いところで調達して、それを人件費をはじめとする製造費の安いところに移動して作ることが必要。そして世界が平和でなくなるとそれができなくなる。花火大会で警備にコストがかかって今までと同じようには運営できないように、安全にはコストがかかるという時代がこれからの世界だろうね。だから、物価高は今後も続くし、もっと厳しくなるかもなあって感覚がある。なので、投資においてもインフレに対して資産を守る意識が必要。

先のリスクの話に戻ると、ボラティリティの高い投資はその代償として高いリターンが求められる。それを「リスクプレミアム」って言うんだけど、上がったり下がったりのリターンをならすと、ボラティリティの高い投資ほどそのリスクプレミアム分が超過リターンになるんだな。短期的には負けるかもしれないけれど、長期的にはリスクが高いとされる投資の方が分がいいということ。その議論の確度を高めるのが「分散」(←また出てきたな。
よく出てくるよねえ)。タイミングや銘柄を分散させることによって、ノイズが少なくなってより早くリターンが収束していくってこと。

財産三分法ってのはかなり昔からある投資手法なんだけど、投資を株、債券、不動産という性格の異なる三つの資産に分散するとリターンが安定するってやつ。「分散がいいんだったら、資産の種類も分散した方がいいんでね?」ってなるよね。教科書的には正しい。ただ自分は、いくら教科書的には正しくても実践では少しアレンジした方がいいという流派。それを理解してもらうには先のボラティリティの話を思い出してもらわないといけない。

例えば株と債券を比較すると、株の方がボラティリティが高いのは明らか。債券ってのは言わば借金の借用書みたいなもんなわけ。だから例えば国債は国が投資家にしている借金。そして金を貸している側としては、市中の金利が上がって「ありゃ、今貸したらもっと利子が取れたな」というとその借用書の価値は下がる。つまり債券は金利が上がると値段は下がるし、逆に金利が下がると値段は上がる。そして金利の上下というのは株の相場に比較すると断然スローモーション。なので初心者でも入るタイミングを見極めやすいんだな。「長期投資を前提にして分散投資をしましょう」ってのは、今の水準が買いに適正か、今後の相場が上がるか下がるかは神のみぞ知るだからこそ必要なこと。それに比較して債券相場は断然初心者にとって組みやすい。今日現在5年国債の水準は0.25%だけど、「5年間国に貸して利子もらうんだったら3%くらいになったら買えばいいかな」とかそういう感じで全然オッケー。そして長期的に見て、これから金利が上がる?下がる?物の値段が上がるとそれによって金利は必然的に高くなる。金利の変動要因には、国が政策として上げ下げする政策的要素がある。経済が上向いて物の値段が上がり過ぎないようにするブレーキが金利。今まで日本は景気が全く冷え切ってたから、ブレーキから足を離してたってのがゼロ金利政策。

そしてNISA口座のメリットは儲かった分が非課税ってことなんだけど、100万円で10%儲かってその20.315%なら意味があるけど、100万円で0.25%儲かってその20.315%って意味ある?ってこと。それが「リターンが低過ぎてタックスメリットがない」の意味。

NISAの投資はボラティリティの高い「リスクアセット」を、時間を味方につけてリターンをならしてリスクプレミアムを取りに行って効率的に投資しようっていう戦略でいい。長期戦である以上、敢えてそもそも高いリターンの期待できない投資対象を選ぶ必要はないってこと。

不動産はどうかな?ここでは有価証券の話だから、不動産の直接投資じゃなくてREIT(リート)への投資ね。REIT (Real Estate Investment Trust)ってのは運用者がいて、不動産を賃貸に出したり、時にはその物件を売却した得た利益を分配するってもの。「うーん、なんか不動産も上がったり下がったりするけど、そのリートってのは株式とそんなに違う値動きすんの?不動産って今日と明日と値段変わるってもんじゃないよね」だよね。確かに現物の不動産は毎日値段が変わるもんじゃないけど、それはある時に値段が大きく動くだけのこと。REITは毎日かなり値段が動きます。気になる人は「東証REIT指数 長期」ってググって一番上のリンクに長期の株の値動きとREITの値動きのグラフがあるので見るといいかな。確かにある期間はちぐはぐの値動きをしていることもあるけれど、全体的なトレンドは似たようなもの。自分はこれから将来の長期の不動産市況、特にREITの主たる収入源である都会のオフィスビルの賃料の推移に対するイメージが全くないので、分からないものには手を出さないということで人には「株一択でいいんじゃない?」と言ってます。

株って言っても、日本株、アメリカ株、先進国株、新興国株と多種多様で、それは分散した方がいいと思っているのでその議論はまた。

(Face Book 1/18/24の投稿を転載)


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