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花粉症の正しい手術方法は?

2020年現在,大きく3つの外科治療があり,それぞれ良い点と悪い点があります。当院は,全身麻酔ができる総合病院なので,2)の粘膜下下甲介手術をすすめます。

1)鼻粘膜へのレーザー照射

麻酔液を湿したガーゼによる局所麻酔で行います。上の写真のように,鼻の粘膜の表面だけを焼いて,浅い火傷を作ります。粘膜が損傷されて,鼻水が止まり,粘膜が萎縮します。しかし体は元に戻ろうとします。粘膜の傷が治ると,症状がぶり返します。すぐ治る人は数ヶ月で手術の効果がなくなり,ふつう効果は1年,もっても数年です。簡単安全な手術なので,開業医でよく行われます。効果がなくなれば,数年ごとに繰り返し手術をします。手術点数が高い(医者からすると儲かる)ので医者はすすめます。しかし,効果が持続しないので,患者のためにはなりません。傷が面でできるので,術後は意外に痛いです。火傷がひどい上の写真をみると,痛そうで自分ではされたくないと思ってしまいます。

2)全身麻酔で曲がった鼻の骨を摘出

レーザーで効果がなかった人は,粘膜下下甲介切除術と鼻中隔矯正術の目的で病院に紹介されます。2泊3日程度の入院で,ふつう全身麻酔で行います。人の顔は左右対称ではなく,鼻の仕切りは左右にくねくね曲がってます。余分な骨・軟骨を削り,左右の鼻の粘膜を支える骨(下甲介)を大きく曲げることで,鼻の通りをよくします。レーザーで鼻の粘膜だけ焼いても,骨から曲がっている人には効果がありません。内視鏡で拡大観察し,粘膜は残して,曲がった骨だけ摘出します。術中は多少出血します。利点は線で切るので手術後さほど痛くない点,骨から取るので効果がずっと持続することです。欠点は,入院と全身麻酔です。当院では,レーザーを省いて,初めからこの治療法を勧めています。

3)後鼻神経切断術

最近,「この手術ができますか?」と問い合わせが多くきます。当院でもできる手術ですが,「うちではできません。」と答えています。2)方法の手術野の奥に出てくる,鼻水を分泌する神経を電気メスで切断する手術です。とても効果があって,ピタッと鼻水がでなくなります。近年,有名になって,日本中で積極的に行われています。しかし,効き過ぎて鼻水がほとんど出なくなって,鼻がカラカラに乾燥する患者さんが,1割も出るそうです。萎縮性鼻炎と呼ばれています。老化して皮膚も粘膜もカサカサになった高齢者が「鼻や口が乾燥して辛い」と訴える症状と同じです。手術して数年で1割の人に生じるなら,10年後,さらに老化が加わったら,より多くの人が将来苦しみます。効果がありすぎて,鼻が乾燥してヒリヒリするのです。理由は,神経を切断するからです。神経を切ったら,「切りすぎた」と後で気がついても逆戻りできません。私は,安易な神経切断術には反対です。それでも,この手術を受けたい,今が苦しい,なんとかして欲しい患者さんもいると思います。

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