説教
……誰かを叱る夢を見ている。
自分が発したとは思えないような言葉で、誰かを叱っている。
自分が知らぬ難しい言葉で、誰かを叱っている。
私は、誰を叱っているのだろう?
叱る私の中にあるのは、悲しみの感情。
なぜ、わかってくれないのか。
なぜ、聞いてくれないのか。
なぜ、逃げ出すのか。
叱る私の中にあるのは、喜びの感情。
良かった、自分自身を持っていて。
良かった、言葉を出す力があって。
良かった、行動する気概があって。
叱る私の中にあるのは、願いの感情。
この人が、迷いませんように。
この人が、悲しみに包まれませんように。
この人が、進むことができますように。
誰かを、叱る、夢を見ている。
私が叱っているのは、誰なんだろう。
私が叱っているのは、なぜなんだろう。
私に叱られた誰かは、私に叱られたことを受け入れない。
私を拒否して、どこかに行ってしまった。
私を置いて、どこかに行ってしまった。
私は、誰もいなくなった場所に、一人、残された。
・・・私が、叱ったところで。
選ぶのは、誰か自身なのだ。
生きていくのは、誰か自身なのだ。
誰かが、私の言葉を受け取ることなど、ないのだな。
・・・ただ漠然と、納得、した。
誰かを叱る、夢を見た。
私が叱っていた誰かは、もういない。
私は、誰かを叱る資格など、持ち合わせてはいないのだな。
私は、誰かを叱る技量など、持ち合わせてはいないのだな。
私は、誰かを叱る余裕など、持ち合わせていないのだな。
私は、口を噤む事を決め、目を開けようと。
・・・夢が微睡み、また夢に落ちてゆく。
誰かを叱る、夢を見る。
誰かを叱る、夢ばかり見る。
誰かを叱る、夢しか、見えない。
伝わらないというのに、いつまでも同じことを説教する自分がいる。
受け入れてもらえないというのに、いつまでも同じことを伝える自分がいる。
誰かを叱る、夢を見る。
誰かを叱る、夢ばかり見る。
誰かを叱る、夢しか、見えない。
伝えたいのは、何なのだろう。
誰かを叱る、夢を見る。
誰かを叱る、夢ばかり見る。
誰かを叱る、夢しか、見えない。
なぜ私は、こんなに叱っているんだろう。
誰かを叱る、夢を見る。
誰かを叱る、夢ばかり見る。
誰かを叱る、夢しか、見えない。
叱ったところで。
私の言葉など、聞いてくれるはずがないというのに。
私の言葉など、届くはすがないというのに。
どうせ、私の、言葉なんて。
「だから、ダメなの。」
声が、聞こえた。
「ぜんぜん、わかってない。」
声が、聞こえてきた。
私を叱る、声が聞こえる。
私を叱る、言葉が聞こえる。
私を叱る、声が届く。
私に、聞きたくない言葉が、届く。
私を叱る、言葉がのしかかる。
私を叱る、力に押しつぶされる。
私は、叱られたくないと思った。
私は、叱られたくないから、逃げ出そうと思った。
私は、叱られたくないと思ったから、逃げ出すことにした。
私を叱る誰かから、逃げだそうと、決めた。
「どうして逃げるの。」
「逃げ出しても解決しない。」
「逃げてもまた同じことが起きるだけ。」
私を叱る言葉が、私を追いかけてくる。
「卑怯者。」
「弱虫。」
「勉強不足。」
私を否定する言葉が、私を追い回す。
「ねえ、何考えてる?」
「ねえ、それでいいと思ってるわけ?」
「ねえ、いいかげんにしたらどうなの!!」
私を責める言葉が、私を追い込む。
「―――。」
「―――?」
「―――!」
私には理解できない言葉が、私を囲む。
ここから、逃げ出さなければ。
ここから、逃げ出さなければ、いけない。
ここにいては、ダメだ。
ここにいては、ダメになってしまう。
私を叱る誰かから、逃げ出した。
逃げる。
逃げる…。
逃げる……。
私は、何から、逃げているのだろう。
私は、何から逃げ出そうとしているのだろう。
私は、何から逃げ出せなくて、つぶれそうになっているのだろう?
懸命に、逃げる、最中。
私は、叱る誰かの、顔を見た。
叱る誰かは、私だった。
叱る誰かは、私だったのだ。
・・・私は、私から逃げ出したのだ。
私の叱った誰かは、私だった。
私の叱った誰かは、私だったのだ。
・・・ああ、なんだ。
私の吐く言葉は、私自身が否定していたのか。
私の言葉を、私は受け入れることができないのか。
私は、自分の言葉さえ・・・聞こうとは、しないのか。
「なるほど、ね・・・。」
全てが、腑に落ちた私は、ようやく…目を、覚ますことが、出来た。
どうももこう、私は怒るという感情をうまい事表現できないタイプでして、わりかし何があってもへらへらしてスルーというか右から左なんですよね…。何て言えばいいんだろう、ああ、そういう考えからもあるよねフムフムとか、自分の知らない感情を撒き散らす人を見て喜ぶ?節があったり。こういうとこだよ、ちゃらんぽらんと言われるゆえんは…うググ。
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