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僕は満足している


「それではお願いします。」

「いいんだね?」


僕は悪魔に依頼をした。

どうしても気に入らない、あいつの命を奪ってもらうことに決めたのだ。

僕の邪魔をするあいつがにくくて仕方がない。


「あの人の命を奪う、そして貴方は奪った命の分生きる、私は貴方の命をもらう。」

「ええ、それでかまいません。」


僕の夢を邪魔する、あいつがいなくなれば。


「貴方の命はあと59年でした。これほどいただけるとは、感謝しかありません。」

「へえ、意外と長生きだったんだな。」


あいつがいない人生を謳歌できる、それだけで僕は満足だ。


「あの人の命はあと三ヶ月です。」

「ああ、三ヵ月後に命を奪ってくれるということかい?」


意外と命を奪うまで長くかかるな。


「違いますよ、あの人の残っている命が三ヶ月。あの人の命は今私が奪いました。」

「はあ?」


「あの人の命を貴方に移しました。貴方はあと3ヶ月生きることができます。」

「何を言っている?」


「貴方の59年は私がもらいました。」

「僕は三ヵ月後に死ぬということか?!」


「貴方はあと三年後にその演技力が認められるはずだったんですね、残念です。」

「あの人は人気絶頂の仲、事故で他界する運命を持って生まれてきたんですよ。」

「短い人生を謳歌することを楽しむために生まれたんですね。」

「謳歌している真っ最中に亡くなりましたね。」

「貴方は苦難の道を歩みたかったようですが、投げ出してしまったようですね。」

「人の命を奪ってしまったので次の人生は・・・何も言わないほうがいいかな?」


「僕は、何をした?」

「人の人生を、奪ったんですよ。」


「僕は…何をした?」

「人を恨んだだけですよ。」


「僕は何をしたらいい?」

「あと三ヶ月間悔やんで生きることですかね。」


「…はは、あんたナニ言ってんだ。」

「何かおかしなこと、言いましたかね?」


「あいつがいない人生を謳歌できる、それだけで僕は満足だ。」


「それは良かった、それでは失礼。」


あいつがいない人生を僕は心から楽しむことにするよ。


あいつがいない人生が三ヶ月間も味わえるなんて。


長い、長いよ、長すぎるよ。


長い長い、僕の夢のような日々が、始まる。



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