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やさしさは、どこから来るのか - 『しあわせの隠れ場所』(原題:The Blind Side)

哀しみは、人をやさしくすると言う。「だとすれば、彼はどれだけの哀しみを背負っているのだろうか」と思う人がいる。『しあわせの隠れ場所』のマイケル・オアー(クィントン・アーロン)のように。

作中、彼は不機嫌そうに眉をひそめ口を結んでいる。わたしは彼が怯えているように見えた。何かを得ることにも、何かを失うことにも。

母はコカイン中毒で、兄弟とも生き別れ、体育館の隅やコインランドリーで生き延びてきた。洋服は片手で数え切れるほど。

彼は自分の部屋を見て「初めてだ」と言う。「自分の部屋が?」と問うと「ベッドが」と答える。ベッドで寝たことすらなかった。そのワンシーンだけで、彼がどんな境遇で生まれ、育ち、暮らしてきたのか想像がつく。

それでもやさしさを持ち続けた。使ったシーツはきちんと畳むし、ゴミは両手いっぱいになるまで拾う。自分だって、数え切れないほどの傷を抱えているだろうに。

彼を救ったのは二人の母だ。彼が求め続けたものとは違ったかもしれないが、どうやら彼はしあわせの場所に辿り着けたらしい。

マイケル・オアーは来月で34歳になる。月並みだが、彼のこれからがしあわせに溢れるものであることを願わずにはいられない。


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