中之島的備忘録 10月20日火曜日
久しぶりに晴れた。
煙のような薄っぺらい雲がたなびいている。
ああ、しろいなあ、と思って凝視していたら、次第に、ただ白いわけじゃないことに気がついた。
パレットで、いくつもの色を重ねて、ようやく出来上がった奇跡の色。
なによりこの瞬間に立ち会えたことに感謝して涙がこぼれおちた。
奇跡の色は、街全体を覆い、現実を消してゆく。
まず、高速道路が消えて、それから、牡蠣小屋が消えた。
おそらく次は、早すぎる冬を告げる声。
肩のない男が、急ぎ足で私を追い越して行った。
男の熱気が振動する。
そしてあっという間に、雑踏に紛れ込んだ。
よく似た男を何人も見かけたけれど、どれもこれも正解じゃなかった。
否。
それは、私なのかも知れない。
黄色い自動車が金網フェンスのぎりぎりに、不器用に止めていた。
そして私は、とうとう裏側を見つけた。
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