中之島備忘録 令和4年4月1日金曜日
昨日までのぼんやりとした暖かさを、風がさらって持っていってしまった。肌の凍る冷たさだけを残して。
黒くてくねくねとした首の長い鳥が、川の表面に顔だけ出してきょろきょろと辺りをうかがっている。ぽちゃんと音がしたかと思ったら、その鳥はおもむろに水の中に姿を消した。
鳥が姿を消したポイントを中心にして、静かな波が円を描く。
鳥のいなくなった川は穏やかに流れ、街の風景をそのまま映し出す。それは噓くさいほど正確に。
ときおり、黒い鳥がまた顔を出した。その度にはじめて見るかのような新鮮な態度で。そして周囲を警戒したあと、そっと深淵に潜り込む。
何度目かに顔を出したとき、ぐうんと背をのばして羽を広げたかと思ったら、水面を忍者みたいに翔けながら、走り去っていった。
鳥が水面を蹴るたびに飛沫がたちあがり、そこに朝陽が不規則に反射した。
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