限界【脚本】
私 疲れた・・・
あー・・・1回座っちゃったらもう絶対動けないのに、座っちゃったー・・・
本当に仕事修羅場過ぎた・・・え?なんで締切ってみんな守らないの?こっちの身にもなってよ・・・あー・・・やっとちゃんと寝れる・・・
でも部屋もぐちゃぐちゃだし、洗濯物も溜まってるし、なんなら朝使った食器も洗ってない・・・あー・・・せめてメイクだけでも落とさないと・・・でも、もう動けない・・・
私 あまりにも仕事が忙しくて限界を迎えていた私の夢に、10歳のわたしが出てきた。
わたし えー!このマンガ、私が編集担当なの!?
私 え?いや、そうだけど・・・
わたし えー!すごいすごい!これ面白いよね!
私 うん面白い。でも先生の筆がマジで遅い・・・てか待って、私?
わたし そう!わたしだよ!でもわたしは私になるから、わたしは私だよ!
私 え?わかんないわかんない。
わたし 細かいことはわたしもわかんないよ〜
私 まぁそれもそうか・・・てか寝てる時って喋っていいんだっけ・・・
わたし わかんない!
私 そっか。まぁいいやどうせ夢だし。
わたし わたしってちゃんとマンガの編集者になれたんだね〜!
私 うん。最近やっと担当任せてもらえる様になったばっかりだけど。
わたし すごい!私がんばったんだね!
私 まぁ、そりゃあね。
わたし 一生懸命働いててえらいな〜!わたしもかっこいい大人になれるんだ〜!
私 本当大変だよ、めちゃくちゃ忙しいし、全然思い通りにいかない。
わたし そっかぁ。でもこのマンガ本当に面白いよ。わたし大好き!だから、すごい!
これを私が作ったなんて夢みたい!
私 作品が面白いのは先生の力だけどね。でも、私もそう思う。本当に面白い。私もこのマンガ大好きだよ。
わたし 編集の仕事、好きなんだね。
私 ・・・うん。正直スケジュールとか全然思い通りに行かなくてムカつくし、大変なこともいっぱいあるけど、結局出来上がった原稿見るとそんなこと全部どうでもよくなるくらい嬉しい。意味わかんないくらい全部が軽くなるしドキドキする。この瞬間の為に生きてるんだって思う。
わたし そんなに?
私 そんなに。全然大袈裟じゃない。
わたし わたしも早く大人になりたい!
私 初めて自分が担当した作品が本に載った時、本当に感動した。
わたし うわ〜!想像しただけでドキドキするね。
私 いつか経験できるよ。
わたし 楽しみだなぁ〜。
私 そうだね。
わたし あのね。わたしこの前、将来の夢の作文に「漫画編集になって、漫画家の先生と一緒にヒット作をいっぱい出します!」って書いたの。
私 そうだっけ?そんなこと書いてたんだ。すごいプレッシャーなんだけど。
わたし そうなりたい、そうしたいって思って書いたんだけど、本当にそうなれるかちょっと不安だったの。でもわたしは大人になってもマンガが好きなんだって分かったし、夢が叶うって分かって嬉しい。だから、がんばってね!
私 待って。私はわたしなんだから、がんばらなきゃいけないのはわたしなんじゃない?
わたし そっか。わたしががんばらなきゃいけないんだ。
私 そうだよ、じゃないと今の私がいなくなっちゃう。
わたし がんばる!
私 任せたよ。私が今もマンガを好きなのは、きっとわたしのおかげだよ。ありがとう。
わたし どういたしまして。一緒に夢叶えようね!
私 うん。
わたし ねぇ、これわたしが今1番好きなマンガ!覚えてる?
私 うわ、懐かしい〜!これ、続編で子ども達のマンガも出るんだよ。
わたし え!?そうなの!?早く読みたい!
私 結局私達は、しばらくマンガの話で盛り上がった。
私 わ・・・結局寝ちゃってた・・・!あー・・・シャワー浴びて片付けしたら、
わたし・私 「本屋行こうかな。」
2023年11月21日放送の渋谷のラジオ「シブコネ」内にて公開したラジオドラマ脚本。
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