超一流のヴァイオリニストが駅でストリート・ミュージシャンをしたらどれだけの人が気付いたか？日常の奇跡を受け取る方法
2007年、アメリカの有力紙
「ワシントン・ポスト」の
ジーン・ワインガーデンは
こんな実験をしました。
ワシントンDCの地下鉄駅に
1人のストリート・ミュージシャンを
立てて、行き交う通勤客が
どれくらい反応するかを調べます。
もっとも、演奏する音楽家は
ただものではありません。
彼の名前は、ジョシュア・ベル。
39歳にして、ヴィルトゥオーゾ（匠）
に認定された世界最高峰のヴァイオリニストです。
格好こそジーンズにTシャツ、野球帽と
いった感じです。しかし、曲を奏でるのは
1713年にアントニオ・ストラディバリが手作りした
350万ドルの世界最高級のヴァイオリンでした。
午前7時51分。
演奏は、ヨハン・セバスチャン・バッハの
パルティータ第2番ニ短調の「シャコンヌ」で
幕を開けました。
チケットの取れない超一流ヴァイオリニストが
43分間6曲を無料で駅前で弾く。
まさにありえない贅沢な企画です。
当初、企画した編集部は
人が集まりすぎて事故が起きることを
懸念していました。
しかし、結果は悪い意味で
予想外でした。
1.誰も世界最高峰の演奏に足を止めない！
演奏中にとおりすがった
合計1,097名の通勤客のほとんどが
なんの関心を示すことなく
通り過ぎていったのです。
もちろんクラシックに興味の
ない方も多いでしょう。
しかし、圧倒的に非日常的な
音が聴こえるのです。
チップを出さなくとも、足を
止めることはあっていいはずです。
本来であれば、ジョシュア・ベルは
1分間に1,000ドルは稼ぐ超一流音楽家です。
しかし、結局この43分間で集まったチップは
わずか32.17ドルでした。
2. 「期待」は「経験」に勝つ
なぜこんなことが起きたのでしょうか？
後日、行動経済学の
第一人者ダン・アリエリーは
この不運なヴァイオリニストに面会して
インタビューをしています。
そこで出たのが次のキーワードです。
クラシックコンサートでは
聴衆は格式高いホールの中で
正装をしてベルベット調の高級シートに
身を委ね、音の世界に没頭します。
こうした「期待」を高める準備なしには、
いくら超一流の演奏をもってしても
人はその音の価値を受け止めにくいのです。
事実、この後のジョシュア・ベルが
行ったヨーロッパツアーは大盛況であり
その年にはアメリカの最も優れた
クラシック音楽家に贈られる
エイブリー・フィッシャー賞を
受賞しています。
3. 学ぶから奇跡に気づける
いかがでしたか？
この実験は私達に２つのことを
教えてくれます。
1つは「受け取る環境」の大切さです。
商品の包み紙や食事を盛るお皿、
それらが提供される空間。
一見、内容自体とは無関係な
そうした外形は、そのものへの
「期待」を作る大切な要素なのです。
「期待」を高める事なしには
いくら中身で勝負といっても
価値は感じにくくなってしまうのです。
2つ目は「学ぶことの意味」です。
とはいえ、本実験ではわずかな人は
この演奏の価値に気付いていました。
長くストリートミュージシャンの演奏に
接してきた屋内のビルで働く男性と
クラシックに精通しており
自身もヴァイオリン演奏歴がある
男性通勤客でした。
彼らはいずれも「見聞」があり
「違い」を認識することができたのです。
それにより1,000人以上の人が
気づかなかった奇跡的な出来事の
価値が受け取ることができました。
すごいことは何の前触れもなく
日常の中で起きます。
本実験中、100フィートほど
離れたアーケードでは、宝くじ売り場に
ならぶ列がありました。彼らは誰も
ジョシュア・ベルの名演奏に気付いて
いませんでした。
とても皮肉なことですよね。
宝くじの当選確率以上のことが
すぐそばで起きていても、
当たるかどうか分からない宝くじから
目は離せなかったのですから。
学習とは世界の違いを知り
奇跡的な出来事を受け取る可能性を
上げるためにするものです。
ぜひ広く学んでいきましょう。
本日もお読みたいだき
ありがとうございました。
もし日常で「引き寄せ」を
おこしたければ、こうした
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参考論文
参考文献（P.309～312）