【エッセイ】家事の工夫
マルチタスクは非効率だ。
2つ(あるいはそれ以上)の物事を同時に進行させるのは、効率が良さそうに見える。上手くいけば、仕事を器用にこなす自分の有能さを周囲にアピールできるチャンスになるかもしれない。
しかし個人的な経験をふまえて意見を述べるなら、仕事のマルチタスクが満足のいく結果につながることは滅多にない。一つ一つ、ていねいに物事に取り掛かったほうが良い結果につながりやすい。
まーけれども。
家事ぐらいは、少しぐらいマルチタスクでもいいんじゃないかなぁ~。
と、ゆる~く考えている。
家事は、ひどく退屈なものだ。
自宅の家事は、お金も発生しないし、やったところで誰も褒めてくれない。
今日やっても、明日やっても、明後日やっても、一週間後やっても、一ヶ月後やっても、一年後やっても――家事に終わりはない。おそらく死ぬまで終わることはない。
どうしてこんなことに時間を費やさないといけないのか。
そう、ため息交じりにぼやきたくもなる。
なので、退屈を紛らわす工夫をする。
私は家事をする時、ラジオを聴くのが習慣になっている。
音だけで楽しめるラジオは、家事のお供に最適だ。
ありがたいことに、YOUTUBEや音楽アプリで検索をかければ、配信されているラジオ番組がたくさん出てくる。その中から、聴きたいラジオ番組を選ぶ。
笑いたい時、学びたい時、リラックスしたい時。
その時の気分で、聴くラジオは変わる。
ラジオ番組を決めると、両耳にワイヤレスイヤホンを装着して、内容を聞き漏らさないようにしながら、家事に取り掛かる。
ラジオに聞き耳を立てながら家事をやると、余計な考えが入ってこなくなる。
それでいて、目の前の家事を不思議と淡々とこなせる。
かごに溜まった洗濯物をベランダに干す。
便器に染み付いた汚れをトイレブラシで磨き落とす。
フローリングに溜まったホコリを掃除機で吸い取る。
肉と野菜を切って炒めて料理をする。
汚れた皿たちをスポンジでゴシゴシ洗う。
乾いた洗濯物をおりたたんで、タンスにしまう。
嫌気がさす家事の時間も、ラジオを聞いていると、退屈だと感じない。
たぶんラジオ番組の内容が面白さに夢中になっているからだ。
ラジオを聞いている時に感じる面白いという感情が、家事で感じるはずの退屈さを薄らいでくれている。
おかげで、ラジオパーソナリティがお別れの言葉を伝える頃には、ほとんどの家事は終わっている。
こーやってラジオを聞けると思うと、家事も存在悪くないものかもしれない。
そして今日は、アナウンサーと漫画家のラジオ番組に耳をすませながら、シンクに溜まった皿を磨いていくのだ。
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