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35 日本における消費税増税の教訓: ビルトイン・スタビライザー不在の税制とその経済への影響

日本における消費税増税が
大きな失敗と見なされる理由はいくつかありますが、
その核心には消費税自体の性質と、
そのタイミングに関する問題があります。

消費税は、
市場における貨幣の循環そのものに対して
均一に徴税するため、
インフレやデフレの自動調整機能
(ビルトイン・スタビライザー)
を持たないという根本的な欠点があります。

その結果、経済がインフレに見舞われている際も、
デフレに苦しんでいる際も、
消費税は経済状態の改善に貢献するどころか、
場合によっては問題を悪化させるリスクを持ちます。

消費税の性質と経済への影響

消費税は財やサービスの最終消費にかかる税であり、
製品の価値にかかわらず一律に課税されます。

これは、例えば贅沢品に対して
高い税率を適用することで、
高所得者からより多くの税を徴収するような
累進性を持たせることができないことを意味します。

結果として、
消費税は全ての消費者に均等に影響を及ぼし、
低所得者にとっては特に重い負担となりがちです。

日本における消費増税のタイミング問題

日本は、デフレや経済成長の停滞に悩む中で
消費税を増税しました。

デフレのもとで消費税を増税すると、
消費者の負担が増え、消費がさらに抑制されることになります。

これは貨幣循環量を縮小させ、
デフレをさらに深刻化させる悪循環を生む可能性があります。

実際、1997年の消費税増税後や2014年、
2019年の増税時には、
消費の落ち込みや経済成長の鈍化が見られました。

消費税とインフレ率の連動調整の提案

消費税が経済の自動調整機能を持たないことを踏まえると、
インフレ率に連動して消費税率を
調整する制度を導入することが一つの解決策となり得ます。

例えば、
インフレ率が一定の基準を超えた場合には
消費税率を引き上げ、
インフレ率が低下した場合には消費税率を引き下げるという方法です。

これにより、消費税がインフレやデフレに対する
スタビライザーとして機能し、
経済の安定化に貢献する可能性があります。

結論

しかし、このような制度導入には、
税率の頻繁な変更による市場の混乱や、
政治的プロセスを通じた迅速な税率調整の実現が難しいという
課題もあります。

日本の消費増税が大きな失敗とされる理由は、
その性質と課税のタイミングにあり、
経済全体の安定と成長を考える上で、
消費税の役割と適用方法について再考する必要があるでしょう。

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