【論文レビュー】改めて、キャリア・アダプタビリティとは何か?:Savickas(1997)
マーク・サビカス先生がキャリア・アダプタビリティを初めて提唱したのは1997年論文です。キャリア・カウンセリングでのご自身の経験から、学生からビジネスパーソンまでを対象として、内的・外的な変化に適応するためにキャリアを準備することを概念として提示しています。うわー、すごいなぁと思ったのは、彼自身に色濃く影響を与えたスーパーやクライツが提唱しているキャリア成熟ではなくキャリア・アダプタビリティこそが重要な概念だ!!と言い切っている点です。
キャリア成熟に代わるキャリア・アダプタビリティ
冒頭でサビカス先生は、キャリア成熟とキャリア・アダプタビリティについて以下のように述べています。
"should replace"という断言口調にはビビってしまいますが、研究者の主張はかくあるべきなのかもしれません。適応(adaptation)のための鍵概念として、キャリア成熟では足りず、キャリア・アダプタビリティこそが重要だとはっきりと位置付けています。
機能主義の系譜
サビカス先生によれば、キャリア成熟は機能主義(functionalism)の流れを汲むものであるようです。機能主義心理学の源流としてデューイの名前を出して本論文では論じられています。で、このデューイの機能主義心理学の流れを汲むのがスーパーなのです。
スーパーは、機能主義の捉え方でキャリア成熟や自己概念に着目した後に、最終的にはライフスパン(Life Span:キャリア発達を時間の視点で捉えたもの)とライフスペース(Life Space:キャリア発達を役割の視点で捉えたもの)とで統合的に捉えるようになります。これは、ライフ・キャリア・レインボーと呼ばれる絵で表されるもので、ググると↓のような感じのものが出てくると思います。
ライフ・スペース/ライフ・スパン理論の課題
スーパーのライフ・スペース/ライフ・スパン理論は、統合的ではあるものの、断片の寄せ集めにすぎない、という批判を受けることになります。統合しようとするとそりゃそうなるよね、という気もするので個人的にはスーパーはかわいそうにも感じます。ただ、変化の激しい時代において静態的に捉えている点が批判されているということなのでしょう。
では、動的に対応するためにはどのようにすれば良いのでしょうか。一つ目のアプローチとして、クランボルツは学習と意思決定に焦点を当てて対応しようとしました。これは、後にPlanned Happenstance Theoryと呼ばれるもので、花田先生がキャリア自律の文脈でよく用いています。
それに対してサビカスは、学習や意思決定はadaptationの一部にすぎないとして、adaptationこそが重要だよ!と本論文で主張しています。
その上で、adaptationすることができる能力としてのadaptabilityがあれば、社会的・環境的な変化に対応できるとしているのです。
キャリア・アダプタビリティの意味と意義
こうして、adaptabilityの重要性を指摘した上で、キャリア成熟に代わるキャリア・アダプタビリティの定義をサビカスはしています。
キャリア・アダプタビリティを捉えることで、カウンセラーが来談者に対して、どのような状況でもどのような生活における役割であっても変化への対応という観点に着目して対応することができる、というメリットをサビカスは主張しています。カウンセリングの現場において、キャリア成熟のような静的なものではなくキャリア・アダプタビリティという動的なものが有効である、という現場目線に立った提示をされているようです。
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