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変化の時代を生きるための動的プロセス型キャリア開発論入門(2)

前回のブログでは花田先生(慶應義塾大学名誉教授)のキャリア理論の前提とポイントを、簡潔に説明してみました。今回から各章を見ていきますが、かいつまんで復習されたい方は以下を読んでみてください。

第1章のポイントは、(1)アンラーニング(2)ストレッチング(3)ダイナミック・アプローチ(4)プランドハプンスタンス、の四つです。順に見ていきましょう。

(1)アンラーニング

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自分自身が囚われている状況からの解放によって気づけるものの源泉は、外ではなく内にあります。かつ、そこから見出されるものは唯一の正解ではなく多様な可能性です。オープンマインドで多様な他者と相互交渉を行うことによって、アンラーニングすることができると先生は述べています。

開発を仏教用語としての「かいほつ」と読ませることは先生のこだわりのポイントです。少しだけ私なりに解説すると、仏教で用いられる開発(かいほつ)は、仏となる性質、つまり、自らの仏性を開きおこし、まことの道理をさとることを意味する言葉です。キャリア開発のアナロジーとして最適な概念と言えそうですね。

(2)ストレッチング

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アンラーニングは大事な考え方ですが、それを行うこと自体が目的ではありません。いま顕在化している自分自身の知識やスキルに囚われず、また自分で描いた自己実現目標に過度にこだわらないようにするという結果も大事です。

他方で、その過程における思考や行動の変化によって、自分でも気づいていなかった潜在的で多様な可能性に気づき、見えてきた機会を活用してみようと少しだけ背伸びをしてみること。これがストレッチングです。トヨタのなぜなぜ分析はあまりに有名ですが、それを個人に当てはめて自分自身による囚われからの解放に活用するのも効果的です。

(3)ダイナミック・アプローチ

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ダイナミック、つまり動的なアプローチの重要性を理解するためには、スタティック(静的)なアプローチであるマッチング・アプローチと対比してみるるとわかりやすいでしょう。

マッチング・アプローチの典型的な例はホランドの適職診断でしょう。六つのタイプを基に、その人にマッチする職業を選択するというものです。しかし、前回扱ったように、仕事も自分自身も多様かつ変化するという中で、唯一無二の正解探しをすることが果たして可能なのでしょうか?可能であったとして、その最適な状況がいつまで続くのでしょうか?

現代の社会状況を考えれば、ダイナミック・アプローチが有効な状況の方が多いようです。目的合理的に逆算式にスキル開発に臨むのではなく、他者と交流しながら自分自身の多様な可能性を絶え間なく開発(かいほつ)し続けること。こうした価値合理的なアプローチが現代におけるキャリア開発の考え方と言えそうです。

(4)プランドハプンスタンス

ここまで扱ってきた要素をプロセスとしてまとめているのが、クランボルツを基にしたプランドハプンスタンスのモデル図です。下図の左下から説明していきましょう。

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好奇心をきっかけに、内なる多様性を開発していくために価値観を自分自身で広げていきます(左下)。自分自身の観点が広がった状態で目の前の職務を眺めるとそれまで気づかなかった小さな工夫の機会が見える時があります。その機会を活かし、楽観的にチャレンジを楽しみながら自分の「志事」を創り込んでいくことでチャンスを拡げていきます(右下)。

しかし、チャレンジをすることには困難も付きものです。逆境の中でも、リスクを取りに行きながら仕事や対人関係を工夫するプロセスの中で自分自身の間口が拡がっていきます(右上)。こうしたチャンスの活かし方を一回だけで終えるのではなく、結果にコミットしながら行動を習慣化していくことで能力開発に繋がります(左上)。こうした一連のプロセスの中でも、各ステップで過度にこだわるのではなく、時に柔軟に対応していくことが重要なのです(真ん中)。


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