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【読書メモ】関家ちさと著『日本型人材育成の有効性を評価する 企業内養成訓練の日仏比較』:第1章 研究の背景と目的
日本型人材育成とは一体どのようなものなのでしょうか。入り口である新卒一括採用と、その後に年功的な運用になりがちな職能資格制度は変わりつつあり、日本型人材育成なるものがあるとすれば、それもまた変わることになると言えます。「日本型」人材育成を描き出すために、著者はフランスの人材育成と比較して考察しています。なぜ著者はフランスを選んだのでしょうか。
フランスを比較対象とした理由を、著者は、職務設計と労働市場の柔軟性という二点挙げています。
①職務の設計方法のタイプが同じだから
著者は、雇用システムの分類を行なったMarsden(2007)の先行研究を基に、企業ごとの生産システムに基づいて業務設計を行う生産アプローチと、外部労働市場で形成された資格制度等に合わせて職務が設計される訓練アプローチの二つをあげ、前者にはフランス・アメリカ・日本が、後者にはイギリス・ドイツが該当するとしています。
この分類ではフランスとアメリカが日本と同じ分類になりますが、次の二つ目の分類によってアメリカではなくフランスが日本と同じタイプであるとしています。
②労働市場の柔軟性が同じだから
Amable(2005)では、「①一次雇用に対する制約の強度、②退職金の総額と解雇予告の猶予期間、③解雇予告期間の長さと継続的有期労働契約の最大更新回数」(9頁)という三つの因子をもとにクラスター分析を行い、労働市場の柔軟性/硬直性を表しています。
その結果、アメリカはイギリスと共に最も労働市場が柔軟であるクラスター1であるのに対して、フランスは日本と同様にやや硬直的なクラスター3として分類されています。この分析結果を基に、著者は、フランスを比較対象としているようです。
次章からは日本とフランスの企業での比較が行われます。
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