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中途入社者のオンボーディングを考える。:『中途採用人材を活かすマネジメント』(尾形真実哉著)を読んで。

先日は新卒入社者の組織適応を扱った尾形先生の著書を扱いましたが、今回は中途採用者の組織適応をテーマとした書籍を扱います。結論から言えば、新卒採用者と中途採用者とでは組織適応のあり方に違いがあり、したがって受け入れ側である組織による打ち手も異なるのです。

中途採用者と既存社員との信頼関係を取り巻くディレンマ

中途採用者が新しい職場でパフォーマンスを発揮するためには、既存社員との信頼関係のネットワークに入ることが求められます。他方で、信頼関係がゼロの状態から創るにはどうするかという課題が中途採用者にはあります。これを因果のねじれ現象という絶妙な言い回しで著者は表現されています。

中途採用者が成果を出すためには、既存社員との信頼関係が重要であるが、信頼関係を構築するためには成成果が重要になるという「因果のねじれ現象」が生じている。(46頁)

では、既存社員のネットワークに入りながら、新しい職場の中で能力発揮していくためにはどうすればいいのでしょうか。

人事と現場の役割分担と連携が鍵

ネットワーク構築支援のためにはメンターや相談役といった役割を設けることが重要であり、本書でも述べられています。本書が興味深いのはここから先です。メンターや相談役を担う主体によって中途採用者にもたらす効果が異なることを提示されています。

具体的には、人事担当者が行う場合には離職率の低下に寄与し、現場の人材が担う場合には職場でのパフォーマンスに影響を与えることを明らかにしています。つまり、どちらも大事というわけであり、人事が抱え込んでもいけないし現場に丸投げでもダメ。両者が役割を理解した上で連携していくことが重要なのです。

中途採用者にはアンラーニングが大事

ここまで組織側における取り組みのあり方について見てきました。では、中途採用者が新しい職場で活躍するために個人としてできることには何があるのでしょうか。

ポイントはアンラーニングであると著者はしています。というのも、新卒採用者であれば、真っ白な状態からその組織で求められることを吸収すれば良いのですが、中途採用者ではそうはいきません。新しい組織で求められることを吸収する段階の前に、学び直し(アンラーニング)の段階があるということを意識することが重要であると言えるでしょう。

これは先日ブログで取り上げた『転職学』と強く関連します。以下で詳しく書いたのでそちらもご参照ください。

オンボーディング・パッケージを鵜呑みにしない

本書の問題意識は、多くの日本企業でオンボーディングの施策が十分ではないという点にあります。いまオンボーディングは流行り言葉になりつつあります。コンサルに提案されたパッケージをそのまま導入するのではなく、人事と現場との役割分担やコンテンツを自分たちで考えることが大事なのではないでしょうか。

おまけ

新卒社員のオンボーディングについては、先日あげた尾形先生の『若年就業者の組織適応』がオススメです。



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