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【読書メモ】『経営学入門(下)<第2版>』(榊原清則著)

榊原清則先生の『経営学入門』の上巻では、組織行動論(ミクロ)と組織理論(マクロ)から成る組織論と、戦略論を中心にして経営学を噛み砕いて説明されていました。それに続く下巻では、その内容を踏まえて、組織論と戦略論を組み合わせて、具体的な事例も交えながら書いてくださっています。

企業成長と組織

チャンドラーの「組織は戦略に従う」という言葉と、アンゾフの「戦略は組織に従う」という言葉は、どちらもアリなのだと思います。つまり、ビジネスの現場において戦略論と組織論は相互作用するのでしょう。

おもに内部成長をはかってきた企業と、おもに買収によって成長をはかってきた企業とでは、内部組織の特徴が系統的に違っているということです。言ってみれば、前者は単一的な組織ですが、後者は異質な事業部門の連合体としての組織です。一枚岩的組織の前者に対し、パッチワーク的組織の後者と言い換えてもよいでしょう。

p.37

本書では、企業の成長のしかたが組織構造の特徴に影響する、としています。これ、当たり前と言えば当たり前なのですが、スパッと言われるとすごく納得します。

日本企業の特徴

内部成長による拡大を成し遂げてきた企業と、買収によって拡大してきた企業とに分けると、日本の大企業の多くは前者といえます。では前者の特徴はどのようなものになるのでしょうか。

日本企業は従来全社的な資源共有度の高いマネジメントを基本とし、そのメリットを最高度に生かす経営を志向してきたのであり、その組織特性は明らかに内部成長に適合的なものであったように思われます。内部志向の成長戦略が、特定の組織を育んできたのです。このような組織はしかし、M&Aにはなじまない可能性があります。

p.37

日本企業の多くは、内部にあるヒト・モノ・カネ・情報といったリソースを最大限に活かすことによって企業を成長させるという志向性を持っています。そのため、既存の組織を前提にして成長戦略を立てるため、(良くも悪くも)内部志向性が高い組織になります。

内部のリソースをうまく活用することで成長できるものの、困難が生じることもあります。それがM&Aです。

M&Aに対応するには組織の構築も必要

内部成長と外部成長の両方を同時並行的に追求しなければならないという近年の戦略課題は、日本企業に対して新しい組織論の構築を求めています。それは一元的ではなく、多元的な構造へ向かって、事業部門ごとの独立性・自立性を強調した組織です。

p.38

両利きの経営が流行っていることが示すように、日本企業では、既存事業の成長とともに新規事業の成長も求められるようになってきています。新規事業を立ち上げて成長させていくためには、既存のリソースだけは十分ではないことも多いでしょう。

そのため、M&Aを活用して外部からリソースを獲得することを選択することもあるでしょう。そうしたことを考えると、日本企業は、新たな組織と両立できる多元的構造をマネジすることが求められるのではないでしょうか。


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