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【読書メモ】優れた学術書を読むと自身の研究が刺激される!?(9/9):企業で働く個人の主体的なキャリア形成を支える学習環境(終章)

終章では、各章のまとめを行った後に、本書による学術的意義と実践的意義とが提示され、今後の研究への展望が示されます。博論というものはこうやって止めを打つのだなぁと感嘆しながら読みました。

学術的意義

キャリア研究における本書の意義は、「企業で働く個人の主体的なキャリア形成を支える学習環境に着目し、学習環境に関する研究の視座から学際的な分析を行った点にある」(262頁)と言えます。キャリアをすすめるのは個人ですが、個人を取り巻く学習環境に着目した点が興味深い点でした。

また、働く個人が、実践共同体に参加したり、職場と実践共同体との越境を行うプロセスを経て、仕事に関わるアイデンティティが形成されるというプロセスを実証的に論じた点にも着目するべきでしょう。

実践的意義

ではどのような学習環境が個人の主体的なキャリア形成を促すのでしょうか。この疑問に対して、個人、企業、社会における提言を述べている点が本書の実践的意義と言えます。これは、昨日のnoteで長々と解説したのでここでは端折ります。

優れた学術論文を読む意義

今後の展望の中で、プロアクティブ行動やジョブ・クラフティングとの関連性について著者は示唆されています。現在の修士課程での私の捉え方とも符合しており、大変勇気づけられるものでした。(言い方を換えれば、他にも着目されている方がおられるということでもありますが)

その上で、本書ではプロアクティブ行動やジョブ・クラフティングが主体的なキャリア形成に影響するという矢印が示唆されています。この矢印については、逆の捉え方、つまり主体的キャリア形成がプロアクティブ行動やジョブ・クラフティングを促すということもあるように感じます。この点について、個人的にはもっと突っ込んで検討してみたいと感じております。

優れた学術書や論文を読むと、自分自身の研究テーマについて突っ込んだ内省ができるのでいいなと感じます。大変勉強になりました。


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