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【読書メモ】人は組織で働くことをどのように意味づけていくのか(正木澄江著):『働くひとの生涯発達心理学 M-GTAによるキャリア研究』[第2章]

本論文は、10年以上民間企業で勤務する30代正社員がどのようにして働くことを意味づけているのかのプロセスを明らかにしています。先行研究を基にしながら著者は、働くことの意味づけを、自分が行なっていることの意味組織・職場にいることの意味という二つから構成されるとして捉えています。

M-GTAの結果図が秀逸なんです。ちょっとボリューミーなんですが。。これからの図については、著者が岡田先生と執筆された以下の論文に同じものが掲載されているため、添付のしやすさを鑑みて正木&岡田(2014)から引用していることをご承知おきくださいませ。

正木澄江, & 岡田昌毅. (2014). 企業従業員の働くことの意味醸成プロセスに関する探索的検討. 産業・組織心理学研究, 28(1), 43-57.
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ざっくり言えば、働くことの意味づけを個人として進めるプロセスと、周囲から促進するプロセスの二点が見事に描かれています。とはいえ、素晴らしい結果図なのですが、分けて捉えないとなかなか咀嚼しづらい感もありますので、初期(1-3年目)、中期(4-9年目)、10年目以降、で分類されたカテゴリーごとの説明を少しだけ行います。

初期(1-3年目)

入社三年間はにおける働くことの意味づけは組織社会化あるいは組織適応と色濃く結びついていることがわかります。【現実との直面】はリアリティ・ショックに対応するといえ、個人として【がむしゃらな取り組み】によって仕事の意味となる礎を築いていくというプロセスです。したがって、周囲からの支援も仕事を行う上での支援や指導であり、組織の一員として仕事を意味づけていくプロセスが描かれていると言えます。

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中期(4-9年目)

アサインされる職務が複雑かつチャレンジングなものになってくる時期です。【困難に向き合う】ことによるチャレンジの結果として【違う景色が見える】ようになることで仕事が持つ新たな意味合いを獲得していく側面があると言えます。職場の他者とのやりとりも、なかば一人前として見做されるために手取り足取りということではなく、時には[人的葛藤]がありながら、職場の中での[人的資源]を形成していくフェーズと言えるでしょう。

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10年目以降

目の前の職務だけではなく、自分自身の職務のつらなりを踏まえて[仕事理念の確立]が為されるフェーズです。[組織の一員としての自負心]の形成も見ることができ、自分にとっての働くことと組織において働くことが[将来に向けた展望]として統合するプロセスと言えるのかもしれません。

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インタビュー内容

ほぼほぼ備忘的なメモ書きとなりますが、インタビュー内容に関する記述(30頁)が大変参考になるので以下に引用します。

はじめに入社から現在に至る経歴の概要を尋ね、①初期の仕事経験について(当時の仕事についての考えや目標、仕事を通じた学びや気づき、職場の人間関係、自分の位置づけ)、②入社から現在までの変化(仕事についての考え、目標、仕事を通じた学びや気づき、自分の位置づけ、失敗または苦しい体験、成功またはうれしい体験)、③職業人生(キャリア)に影響を与えた人たち(その人たちの役割や意味)、最後に④今後の計画や目標について語ってもらった。


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