見出し画像

【読書メモ】多面評価は育成に活用せよ!:『人と組織の行動科学』(伊達洋駆著)

多面評価は、実務上では360度評価(上司、斜め上の上司、同レベルの同僚、部下、社外ステイクホルダーなど)と呼ばれるものを主に指すと捉えればOKです。通常の人事考課では行われない複数名の部下からの評価による気づきを促すこともポイントであるため、マネジャー以上を対象として行われることが多い施策です。外部を使わずに社内のみで行うと、コンフィデンシャリティの担保が大変で、人事内にもあまりプロセスを共有できないものなので、運用がえぐい施策でもあります(過去に苦い思い出あり)。

多面評価は育成に効く

多面評価のポイントは、評価対象者にとっての育成にあると言えます。特に、部下から評価されるという場面は日常的にはなかなかありませんので、部下から見た自分と自己像とのずれからの気づきは大きいのかもしれません。

多面評価が育成につながるのは、なぜでしょうか。多面評価によって、
・周囲からの自分に対する評価
・自分自身による自分に対する評価
の2つを突き合わせることができ、「自分に対する評価」がより適切なものになるからです。
伊達 洋駆. 人と組織の行動科学 (Japanese Edition) (p.82). Kindle 版.

多様な他者からの評価はズレがあることも多いでしょう。そうしたズレから本人が気づけるものは多いと言えます。

評価には使わない方が良い

気づきを促すという点では効果があるものの、多面評価は人事考課にはあまり向いていないと本書ではされています。というのも、本来は人間には得意・不得意があって項目ごとに評価のばらつきが出るはずなのですが、多面評価では、総合評価が高い場合には各項目で高くなり、その逆も然りになるという副作用があるためです。

そのため、各項目での全体傾向から評価対象者が学べるという側面はあるものの、それぞれの項目の評価の公正性という観点では厳しい点があります。したがって、処遇と関連する評価項目には適せないという限界を心しておくべきなのでしょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?