【読書メモ】質問紙のつくり方のガイドブック:『質問紙デザインの技法』(鈴木淳子著)
質問紙を作って定量調査をはじめて行おうとする学生にとってとてもありがたいガイドブックです。最初から最後までスルスルと読めますが、何度となく読み返すことになりそうです。
本書の位置付けとしては、質問紙調査に関して、以下の書籍のより具体的かつ詳細なガイドブックと言えそうです。
質問項目の順番の考え方
p.149-151にある質問順序に関するポイントを整理すると以下のようになります。
簡単な質問から難しい質問へ
事実に関する質問から意見・意識・感情に関する質問へ
一般的な質問から個別(特殊)質問へ
過去に関する質問から現在に関する質問へ
知識に関する質問は後半に配置
重要な質問は中間に配置
プライバシーに関する質問はできるだけ最後の方に配置
デモグラフィック特性に関する質問は最後に配置
総合評価と個別評価の並べ方に注意
キャリー・オーバー効果に注意
いざ質問紙をデザインするというときに押さえたい考え方です。個人的に見落としてしまいそうな二つの点だけ補足します。
デモグラフィック項目
デモグラフィック項目は、名義尺度や順序尺度として有効な分析に重要な項目です。そのため質問項目の中に入れ込むべきものと言えるでしょう。ただし、個人情報に関するものなので留意が必要です。本書でのポイントを見てみると、「回答は個人データではなく集合データとして扱う」(143頁)べきであるとしています。
キャリー・オーバー効果
キャリー・オーバー効果(carry-over effect)とは、質問項目を検討する際にはよく出てくる言葉です。これは、「先の質問項目の内容が、後の質問項目への回答のしかたに影響を与えること」(150-151頁)を意味します。つまり、後半の質問項目に対して中立的に回答するためにキャリー・オーバー効果に注意する必要があるというわけです。
質問紙を実際に設計する際に、ポイントをチェックするためのガイドブックとして重宝しそうな本です。
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