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【読書メモ】デモクラシーと、社会における普遍性:『G・H・ミード著作集成』(植木豊編訳)第2篇・第36章

シンボルや言語を通じた社会における相互作用を扱ってきましたが、本章では、その社会のベースには何があるのかについての考察がなされ、デモクラシーや普遍的宗教といった存在について触れられています。

まずミードが述べているのは、普遍的な抽象的概念がある社会の規定を為すといっても、そこに介在するのは言語であるという点です。社会を構成する概念として経済もありますが、人の考え方や行動に意味を与えてお互いに影響を与え合えるのは、言語がその基盤として存在するからです。

そのため、使われる言語が変われば、それを用いる人の思考や感情にも変化が生じます。

新しい言語を学ぶ人は新しい精神を手に入れる。こうした学習者は、当の言語を用いる人々の[物事に対する]構えに感情移入するわけである。(498頁)

英語でプレゼンを行うときと、日本語でプレゼンを行うときとでは、所作が自ずと変わるものでしょう。また、断定や主張をする際のトーンも変わります。自動翻訳機能によって字義的な意味合いの共有はできるようになるかもしれませんが、ある単語を用いる精神的な作用や背景まではなかなか伝えづらいのかもしれませんね。

こうして共通の言語を基盤として、ある社会において、普遍的宗教の構えが生じたり、政治的発達が拡大したりします。これらの方向性を社会において束ねる存在がデモクラシーであるとミードはしています。古き良きアメリカ的な考え方とも言えるかもしれません。


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