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【論文レビュー】中途入社者の定着のために考えたいこと:宮本・池田(2022)

本論文では、学習目標志向性とフィードバック探索行動との関係を明らかにしながら、そこに対してLMXが調整効果を持つことについて実証的に検証しています。

宮本知加子, & 池田浩. (2022). 学習目標志向性がフィードバック探索行動を引き出すとき─ LMX と心理的安全性の調整効果の検討─. キャリアデザイン研究, 18, 83-92.

結論

本論文の結論は、①学習目標志向性がフィードバック探索行動に影響を与える、②LMXは①の影響関係に調整効果を持つ、③心理的安全性はフィードバック探索行動に影響を与えない、という3点に集約できそうです。

①は著者たちの仮説通りの結果であり、②は後述するように仮説通りに調整効果がありながらその内容は仮説と反対であったこと、③は仮説が否定された、という感じになります。仮説通りでないということをネガティヴに捉えられる方もいるかもしれませんが、そのようなことはありません。先行研究に基づきながら、一般的に妥当と思われる仮説を構築し、それが否定されるというのはわかりやすく新しい知見を算出したものと考えられるためです。

LMXの調整効果

上述した②について補足します。学習目標志向性からフィードバック探索行動への影響関係に対するLMXによる調整効果は以下のように検証されました。

p.89

要は、LMXが低いほど学習目標志向性によるフィードバック探索行動を促しますよ、ということを言っています。直観的には、LMXが高い方が良いのではと思いますし、著者たちはそのように仮説を置いていましたが、反対の結論になったとしています。

これは、学習目標志向性という本人の特性に近いものが高ければ、上司との関係性など関係なく、職場におけるフィードバック探索行動がなされるということのようです。もちろん、LMXは他の概念にも効くわけですからその必要性は間違いないわけではありません。

実践的示唆

プロアクティヴ行動の一つであるフィードバック探索行動は特に組織に新たに入った中途入社者に求められる行動であることです。そこで上記の結論を元に読み取りたいことは、周囲による中途社員への関係性構築は必要かもですが、それよりも学習目標志向性を本人が高く持っているかどうかがフィードバック探索行動には効く可能性があるということです。

最も露骨に言えば、学習目標志向性の高い人材を採用できるかどうかに掛かっているとも言えます。定着のためにも採用プロセスに注力せよ、ということなのかもしれませんね。

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