【読書メモ】「発達の最近接領域」とは何か?:『ヴィゴツキー小事典』(佐藤公治著)
ヴィゴツキーの心理学について、彼の人生そのものを追いかけながらその主張が紹介される本書の最終盤に、ようやく発達の最近接領域がテーマになります。
旧約聖書から影響を受けた反予定調和論
ここまでのヴィゴツキーの主張、とりわけピアジェへの批判の部分に端的に現れていたように、彼は内的発達が予定調和的に為されるという捉え方に対して極めて批判的です。
子どもの発達を、他者との相互作用プロセスによって見ようとするヴィゴツキーにとって、子ども自身に閉じた内的発達を重視する予定調和論を否定的に捉えることは当然なのでしょう。
こうしたヴィゴツキーの捉え方は、彼がギムナジウムの時代から愛読していた旧約聖書の『コヘレトの言葉』の中で未来において何が起こるかを知る者は一人もいないという言葉に影響を受けたのではないか、という著者の推察は大変興味深いように思えます。
発達の最近接領域
反予定調和論の立ち位置から、相互作用プロセスにおけるダイナミックな発達を論じたヴィゴツキーは、彼の中でおそらく最も有名であろう発達の最近接領域を提唱します。孫引きですみませんが、以下のような考え方です。
ビジネス界隈ではよくストレッチ・ゴールということが言われます。Googleさんが流行らせたムーンショットでもOKです。現在の状況や能力から見て高い段階を学習目標として設定することをヴィゴツキーは20世紀前半の段階で言っていたわけです。
自律的に働く、ということが昨今では称用されます。それ自体は素晴らしいものであると思うものの、自分自身が目指したい方向性やそこに向けた能動的な行動というものは、必ずしも自ずから出てくるものではありません。他者との相互作用が大事であり、ロールモデルと言えそうな他者を模倣してみることから得られる刺激を基に、自律的な行動というものは生み出されるのかもしれません。
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