【論文レビュー】若手社員が早期離職する三つの要因とは何か?:初見(2017)
なぜ若手社員は会社を辞めるのか?という課題は、じわじわと着目され続けている人事テーマだと思います。現職は離職率が極めて低い企業なので切実には感じないものの、これまでいた企業では結構な課題感であり、社会的にも大きな課題だと理解しています。今回は、初見先生(実践女子大学)の学位論文から、若年者の早期離職の三つの要因についてまとめます。
早期離職者の時代区分
本論文では若年者を「新規学卒者として就職した入社1年目から3年目の者」(p.18)と定義し、新規学卒入社3年間以内の離職を早期離職としています。本論文で対象としている大卒者の早期離職者の比率を表している図表が以下です。
早期離職の背景は時代と共に変遷するものであることはなんとなく肌感でもわかるかと思います。ただ、こうして4つの時代区分で大卒者の入社3年間の離職状況を見るとデータに現れるなかなか興味深い一面もあります。著者は先行研究を考察する中で、早期離職率が年代に応じて上下動する理由に関する先行研究群には、①環境要因、②個人要因、③企業要因の3つのタイプがあるとしています。
①環境要因
若年者の卒業時(厳密には就職活動時)の環境が早期離職に影響すると捉える研究群が環境要因と呼ばれるもので、「「世代効果」研究」(p.20)と呼ばれるものとされています。
たとえば、私はロストジェネレーション期の後半(2003年卒)の人間です。製造業の人事部門に入りたかったのに、間接部門の採用数が絞られていたことと自分自身の力不足で軒並み落ちて、二番手群で志望していた教育ベンダーに入社しました。とはいえやっぱり製造業に行きたくて転職しよう、という外的キャリアを選んだ、というのは環境要因ベースでの離職でしょう。
(注)私は初職を新卒入社後3年4ヶ月で退職しているので厳密には早期離職には当てはまらないのですが、わかりやすくするための例示につき、大目に見てください。
②個人要因
二つめは職業観や就業意識といった個人の要因です。環境要因や企業要因が若年者の周囲の影響を問うているのに対して、若年者の個人の内的な問題をもとにした研究群と言えます。
ここでも私自身を例に置くと、私はそもそも就社という意識がありません。つまり、会社に就職させてもらっているという意識が弱く、会社による機会提供と私という人的資源の提供を天秤にかければ良いだけだと考えています。こういう個人は内的な特徴から早期離職しやすいと言えるのではないでしょうか。
③企業要因
三つめは企業要因です。企業の昇進昇格制度や賃金カーブをはじめとした人事システムが、個人が働き続ける誘因がどの程度あるかが早期離職に関係します。さらに言えば、働き続けるためには金銭的なものだけではなく、多様な生き方や働き方を支えてくれる制度や運用の実態がその企業にあるかどうか関連していると言えそうです。
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