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【読書メモ】個人・企業・社会に求められることは何か?(8/9):企業で働く個人の主体的なキャリア形成を支える学習環境(第7章)

本章では、ここまでの章で明らかになったポイントが整理され、個人が主体的なキャリア形成を行うために個人・企業・社会がそれぞれ何を重視するべきかについての提言が最後に為されています。その前に、まずここまでのまとめとして、個人における経験と内省、職場における開放性、メンバー同士の信頼と自己開示の雰囲気を有する実践共同体、という三つのキーポイントの関係性が取り上げられています。

ここまで論じてきた章の議論の整理として、図7-1(224頁)で三つのポイントの関係性が示されているのでご参照ください。

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では、主体的なキャリア形成のために必要なことは何なのでしょうか。社員に対して「主体的にキャリア形成してください!」と経営や人事が言うだけではもちろん不充分なわけでして、著者は個人のみならず、企業や社会も含めて五つの提言をされています。

提言1:主体的なキャリア形成には支援が必要であるという視点を持つ

ジョブ・ローテーションや年功的な昇格制度の運用が為されがちであった日本の大企業では、従来の社員が主体的にキャリア形成をするというマインドセットがなかなか充分ではありません。また、入社する若手社員の側も、一社で勤め上げたいという希望者は昨今でも増えてきており、世代を問わず主体的なキャリア形成に課題があると言える状況です。

このような状況を踏まえれば、主体的にキャリア形成するために様々な支援が必要であるということは自明です。また、キャリアデザインに関するワークショップのような支援を単発で行っても難しいでしょう。というのも、職業に対するアイデンティティは、自身の変容、環境の変容によって絶えず更新されるものなので、定期的なフォローアップが必要であると考えるべきです。

提言2:企業はフレキシブルな働き方を実現し職場での学習支援を進める

学習行動がキャリア形成に繋がるということが本書での主張ポイントであることを鑑みれば、上司の観点では指示型での指導だけでは足りなくなっているといます。つまり、上司は部下との関わり方を「部下の学習や成長という視点から捉え直すことが必要」(252頁)と言えるでしょう。

とりわけ、部下とのコミュニケーションにおいて、「上司は部下に対して仕事の目的や内容を説明し明確にすること」(252頁)に留意することが必要です。反対に言えば、こうした仕事とそれを取り巻く状況に対して明示的に伝えることで、メンバーが職務に取り組みながら主体的にキャリア形成できるようになる、とも言えます。

提言3:企業は社員が実践共同体に参加し、活動することを支援する

提言3と提言4では、共に実践共同体への参加が提唱されていて、提言3は所属する企業の内部(社内)における実践共同体を対象としています。つまり、部門や職種を超えた社内の多様なメンバーが集まる実践共同体であり、情報共有や新たな知識やアイディアの創出を目指した活動を通じて、個々人の主体的なキャリア形成にもつながるということです。

提言4:個人も職場以外のメンバーとも関わりを持つようにする

提言3のような社内での多様なメンバーでの実践共同体とは別に、職場以外の越境による実践共同体間のつなぎを意識した活動を個々人が意識することも大事であると言えます。実感値で言えば、実践共同体は玉石混淆であり、玉か石かの差は、本書でも挙げられているコーディネーターに起因するところが多いような気がします。だからと言ってコーディネーター任せにするのではなく、自身にとって「玉」となる実践共同体を探索し、自身も積極的に参画することで「玉」になるよう磨くことが大事なのでしょう。

提言5:社会における学習の場の充実

昨今、リカレント教育が話題になっています。「大学を出たら学びは終了」という古い価値観が今でも流布している日本社会においては、社会人が働きながら学び直すためのインフラ整備は重要です。コロナ禍への対応としてオンラインでの学習環境が現実的な選択肢となっている今こそ、社会人が学びへアクセスする好機なのかもしれません。たとえば、立教のリーダーシップ開発コースとか(笑)。

あまり宣伝が過ぎるのは本意ではないのでこの辺で今日は終わりにします。


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