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【読書メモ】『組織論のエッセンス』(M・J・ハッチ著)

本書は、組織論について骨太に解説されている濃厚なテクストで、ハッチ組織論の入門書のような書籍です。デューイからミードを経由してシャインやギアツの組織文化、バーガーやルックマンからワイクへと向かうセンスメーキング、フーコーやサイモンの権力論からフェファーの組織化など、短いテキストの中で丁寧に扱われています。

ハッチの組織論のポイント

本書のような訳書の素晴らしい点は訳者による解説が載っている点です。本書が特に素晴らしいのは、訳者解説に一段落で本書のスタンスが端的に書かれている点と言えます。

 本書で展開されたハッチの組織理論の特徴として、経営実践と隣り合わせになっている「シンボリック・解釈主義という方法論上の視点」、形あるモノとして存在する「物質や物的構造への注目」、そして組織化(organizaing)という「変化のプロセスを捉えるフレームワーク」の提示の3点を指摘することができる。

p.183

数年前にある方から「訳書を読む場合は訳者解説から読んだ方がいいですよ」というアドバイスを受けてから踏襲しているのですが、本書もオススメです。最初に上記の内容を頭に置いた上で読み進めていくと見取り図を持ちながら読書できるのではないでしょうか。

社会的構築とセンスメイキング

社会的構築の領域ではバーガーとルックマンを取り上げています。社会学的な文脈でハッチ先生は捉えているようで、以下のように書かれておられます。

「社会的に構築されたもの」は、社会的事実あるいは日常生活の現実と考えることができる。これらは客観的には存在しておらず、むしろ、私たちがそうした経験を客観化し、それについて互いに語り合うことで、自分の人生の意味を理解しようとするときに現れてくる。客観化とは、社会的に構築された現実が、私たちが通常、現実と呼ぶものとどう違うかを示すことである。

p.61

こうした社会的な意味の構築というところからワイクのセンスメイキングへと説明が移っていきます。センスメイキングは「経験をチャンクに分解し、それぞれに意味を付与すること」(p.61)と端的に書かれていますが、もう少し長く引用すると以下のような感じです。

 様々な方法で社会的に構築された現実についての認知マップは、地図化された領域に他ならない。それが使えるおかげで、対象がセンスメーキングによって間主観的に作られた際、客観的に存在しているものとして考えやすくなる。(中略)ワイクにとっては、存在するのは組織化であって組織ではない。

p.62

ワイクの議論をハッチ先生がわかりやすく(そうでもないかも?)解説してくれているありがたい箇所です。

ハッチ先生の解説に飽き足らず、ワイクを読みたいという方は『組織化の社会心理学』をぜひ読んでみてください。就寝前に読むとぐっすり眠れると思います。(安眠できるかの保証はありません。。)

苦闘しながら章ごとに内容をまとめたnote記事もありますので奇特な方はご笑覧ください。いかにわかりづらいnoteだったかは、いつにも増して「いいね」の数が少ないのが何よりの証拠でしょう。

なお、バーガー➕ルックマンの書籍はワイクとの比較ではだいぶ読みやすいと思いますので、ご参考までに貼っておきます。私も好きな書籍の一冊です。

そして『Hatch組織論』へ

センスメイキングから組織化の話に加えて、組織文化の話も大変濃厚に語られているのでぜひ気になる方は本書を読んでみてください。その上で、ハッチ先生の認識論が解説されているさらに濃厚なテクストを本格的に読みたいという方には『Hatch組織論』が待っています。本書はその入門書とも言えそうです。

『Hatch組織論』も好きなタイプの書籍ではあるものの理解するのにだいぶ苦労した記憶があります。私のnoteまとめを貼っておきますのでご関心のある方はご笑覧くださいませ。


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