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【徹底解説】キャリア・アダプタビリティ尺度(3)調査分析:Savickas & Porfeli(2012)

論文を読む際は、調査分析の箇所はざざっとしか読まないことがほとんどです(ごめんなさい)。ただ、まじめに読み込むと勉強になることが多く、自身の研究にいきるものだと実感しました。たまにはで良いので(?)じっくり読むと良いですね。

Savickas, M. L., & Porfeli, E. J. (2012). Career Adapt-Abilities Scale- Construction, reliability, and measurement equivalence across 13 countries. Journal of vocational behavior, 80(3), 661-673.

日本は調査不参加

当初、18か国の職業(キャリア)心理学者が参加して概念定義を行い、最終的には13か国で定量的な国際調査を実施したと報告されています。当初の18か国の中には日本人の研究者がいたのですが、最終の調査実施国では残念ながら日本は不参加となりました。

イギリスとオーストラリアは、尺度を用いた定量アプローチは行わず、定性アプローチを取ることになったために最終的な定量調査には参加しなかったと説明があります。他方で、日本については特に理由に関する説明がないのでなぜ不参加になったのかは本論文からはわかりません。国際比較ができなかったのは後から学ぶものとしては残念に思いますが、事情があったのでしょう。

尺度開発

測定尺度を開発するプロセスとしては、①25項目×4下位尺度でのパイロット・スタディ、②探索的因子分析で11項目×4下位尺度(Career Adapt-Abilities Inventory - Version1.0)に絞り込み13か国で調査、③確認的因子分析を行い最終的に6項目×4下位尺度(Career Adapt-Abilities Inventory - International Version2.0)で確定、という段階を踏んでいます。

当初の目算としては、5項目×4下位尺度の構成になるように目指したと書かれているのが生々しいですね。たしかに合計20項目の方が区切りとしては良かったのですが、(当たり前ですが)ガチで分析して24項目に着地したことがよくわかります。

5件法

キャリア・アダプタビリティ尺度の5件法はなかなか独特です。というのも、そもそも教示文がかなりオリジナリティがあるからなのですね。雰囲気を掴んでいただくために、International Version 2.0の教示文を原文そのまま引用します。

Different people use different strength to build their careers. No one is good at everything, each of us emphasizes some strengths more than others. Please rate how strongly you have developed each of the following abilities using the scale below.

p.672

こうした本人の主観的な強みを測るものなので5件法も独特なものになっているようで、最終的には以下のものになっています。

5 = Strongest
4 = Very Strong
3 = Strong
2 = Somewhat strong
1 = Not strong.

p.664

3が一見すると「真ん中でしたっけ??」と思える内容ですが、強みについて問うているのでstrong(強い)というのは中立的な程度を表すのでしょう。

測定不変性

13か国での国際調査のため測定不変性を見ています。測定不変性は四つの段階で行われるようですが、本論文でも以下の①〜④で見ています。

①Configural Invariance:因子構造が同じと言えるか
②Metric Invariance:因子負荷量が同じと言えるか
③Scalar Invariance:切片どうしが同じと言えるか
④Residual Invariance:測定誤差が同じと言えるか

結果については考察のパートをまとめる際に述べますが、結論を先取りしますと、①②はOKで、③④の不変性は認められなかった、という結論です。

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