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【先行研究】キャリア・アダプタビリティの先行要因(5)プロティアン・キャリア志向

プロティアン・キャリア(Protean Career)は法政の田中先生が書籍や記事等でだいぶ喧伝されているので日本企業でもわりと知られてきている概念でしょう。専門家にお叱りを受けそうですが、、、ざっくり言えば、変幻自在に自ら変化を創り出していくキャリアの考え方です。こうした志向性をプロティアン・キャリア志向と呼び、キャリア・アダプタビリティに相関を与えている先行研究があります。

プロティアン・キャリアをもっと知りたい方は以下の田中先生による解説をどうぞ。

プロティアン・キャリア志向とキャリア・アダプタビリティ

プロティアン・キャリアは、ニューキャリア論と呼ばれるキャリア理論の主要な一つで、個人が変化を創り出しながらキャリアをすすめるという考え方を取っています。組織に依存しない自らの主体性に重きを置いているキャリア観です。

変化を自ら創り出すわけですから、他者や環境との相互作用を経てキャリアをすすめるキャリア・アダプタビリティとも近いことはなんとなく想像がつくでしょう。Chan et al.(2015)は、自らの変化志向を表すプロティアン・キャリア志向(Protean Career Orientation)がキャリア・アダプタビリティに影響を与えていることを実証的に明らかにしています。

キャリア・アイデンティティの未確立が離職を招く!?

プロティアンとキャリア・アダプタビリティの研究群で面白い示唆を出しているのは、Haibo et al.(2018)です。Haibo et al.(2018)では、キャリア・アダプタビリティが組織にとっての成功(Organizational Success:離職意思、職務業績)や個人のキャリア上の成功(Individual Career Success:キャリア満足、年収)に影響を与えており、その影響関係にはキャリア・アイデンティティが調整していることを明らかにしています。

つまり、キャリア・アダプタビリティが組織や個人にとって良い影響を与えるかどうかはキャリア・アイデンティティの確立状態に影響を受ける、ということです。たとえば、キャリア・アダプタビリティの得点が高くてキャリア・アイデンティティの得点が低い人は、キャリア上の困難を解決するために他の環境に挑戦機会を求めようと離職する可能性がある、ということです。

日本企業では、組織から評価されている二十代の若手社員の早期離職が問題視されるようになってきています。こうした若手のリテンションの問題の背景には、学生時代のキャリア教育や社会活動によってキャリア・アダプタビリティは高いものの、企業での活動の中でキャリア・アイデンティティを見失い、しかしキャリアをすすめる能力は高いために他社での挑戦に挑もうとしての転職ということなのかもしれません。


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