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【読書メモ】自発性発揮と組織コンテクスト:『組織と自発性』(高尾義明著)第1章

本書は、著者の博論を基にして加筆・修正されたものです。書籍化された博論を読むたびに、これだけ高いレベルものを書くことができるのだろうかといつも不安になりますが、勉強になるのは間違いないです。文章もきれいなので、論文を書く上での勉強にもなります。

本書の問い

「はしがき」で本書の問い=博論の問いを高尾先生は以下のように述べられています。

どのようにすれば組織で自発性を発揮しうるのだろうか。また、組織はどのように個人の自発性を取り込みうるのだろうか。このような問いを起点として、これからの組織ー個人間関係のあり方について理論的な洞察を深めていくことが本書の狙いである。

i頁

自発性や、組織と個人の関係性、といった言葉からは、組織アイデンティフィケーション、経営理念浸透、ジョブ・クラフティング、といった著者の現在に至るまでの研究テーマを彷彿とさせるのは私の邪推でしょうか。いずれにしろ、博士課程での研究上の問いがその後の研究でも活きるということだと思うので、しっかりと向き合って考えなければならないと思いました。

組織と個人の自発性

個人の自発性は、組織にとって必ずしも良いものとは限りません。悪く作用する場合には組織の機能不全に至るリスクもあります。少し長いですが、きれいに観点がまとまっている箇所を引用します。

 …「構造」の機能不全という事態を避けようとして、個人の自発性をまったく排除しようとすることは、(中略)イノベーション創出や組織の自浄化の機会を逃すことにつながるだけでなく、組織メンバーの活力を削ぐことにもなりかねない。
 こうしたことをきっかけとして、組織の境界設定を担う「構造」のゆらぎや変容が生じていく可能性がある。組織メンバーにとては、「構造」に関するそうしたゆらぎや変容は自発性を発揮するチャンスとして活用しうるものである。

31頁

組織から個人に向けた矢印と、個人から組織に向けた矢印との緊張感のある関係性について示唆されている箇所だと思います。この後の章での進展がたのしみになります。


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