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【読書メモ】シンボリック相互作用論とグラウンデッド・セオリー:『グラウンデッド・セオリーの構築』(K・シャーマズ著)[第10章]

この章は濃厚です!パース、ジェイムズ、デューイを経てのミードによるプラグマティズムから、ブルーマーのシンボリック相互作用論を経てグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)がどのように影響を受けたのかが分厚く記述されています。GTAの思想的基盤を知りたい方にはこの章だけはぜひ読んでいただきたいオススメの一章です。

シンボリック相互作用論とは何か

院生時代にストラウスに師事した著者による、シンボリック相互作用論の解説は読み応え十分です。シンボリック相互作用論の要諦についてのまとめをいくつか取り上げてみます。

人の行為を自己、状況、そして社会を構成するものと見る動的な理論的視点(286頁)
言語とシンボルは私たちの意味と行為の形成と共有において決定的な役割を果たすと仮定(286頁)
解釈と行為は相互的なプロセスで、互いに影響し合う(286頁)
私たちは自らの状況をどのように見るかに応じて行為する(286頁)
わたしたちや他の人たちの行為は自らの状況に影響を与え、その結果、私たちは今起きていること、過去に起きていたこと、未来に起こることの解釈を変えるかも(286頁)
現在がどのように明らかになり、現在がどのように過去の解釈を特徴付けるかを分析する(286頁)

自身・他者・社会との相互作用を見ようとしていること。動的なプロセスに焦点を当てていること。解釈によって現在と未来を意味づけること。このようなシンボリック相互作用論は、「研究対象の世界にある意味、行為、そして出来事について目を開く手段を提供」(286頁)すると著者がしていることに着目するべきでしょう。

シンボリック相互作用論を用いる研究者の前提

ではシンボリック相互作用論に依拠した研究を行う研究者はどのような前提に立っているのでしょうか。まず、シンボリック相互作用論という名前の生みの親とも言えるブルーマーは以下の三点を指摘しています。

1:人は、ものごとの自分にとっての意味にのっとって、それに対して行為を行う。
2:そのようなものごとの意味は、個人がその仲間と一緒に参加する社会的相互行為から導き出される、またはそこから生じる。
3:このような意味は、個人が自分の遭遇するものごとに対処する中で、この個人が用いる解釈のプロセスにおいて扱われ、また解釈プロセスを通して修正される。
(295頁)

この三つの前提に加えて、著者はさらに三つの前提があるのではないかとして以下を提示しています。

1:意味は共有される言語とコミュニケーションを通して解釈される
2:社会的相互作用における意味の仲介は、絶え間なく創発するプロセスの性質によって区別される
3:解釈的プロセスは、人々の意味、及び/または、行為が問題となる、あるいはその状況が変化する時、明示的になる
(295頁)

シンボリック相互作用論を用いた研究の一つがGTAですし、多くの質的研究は影響を受けていると言えます。したがって、GTAをはじめとした質的研究を行う際には、上記の六つの前提を意識した上で取り組むことが大事になると言えるのではないでしょうか。


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