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【読書メモ】7章 時間的展望(千鳥雄太著):『非認知能力』(小塩真司編著)

時間的展望にはさまざまな定義があるようですが、著者は、「過去・現在・未来に関して、どのような見解をもっているか、それらをどのように主観的に関連づけているかということを、広くすくい上げる概念」(116頁)とまとめています。異なる時間軸で自分にとっての意味合いを見出すもの、というあたりでしょうか。

時間的展望の分類と測定

時間的展望の概念の分類にもいくつかあるようですが、2015年のメロウとウォーレルの五領域の分類では、(1)態度、(2)指向性、(3)関連、(4)頻度、(5)意味で整理されています。

このうちの(1)態度を測定する尺度として、ジンバルドとボイドとが開発したZTPI(Zimbardo Time Perspective Scale)が国際的に最も使われています。これは、①過去肯定、②過去否定、③現在快楽、④現在運命、⑤未来の五つとして捉える尺度です。

時間的態度の基礎研究

時間的態度が研究される中で、二つの概念の研究が蓄積されているようです。一つ目は時間的指向性で、「過去・現在・未来のうちどの時制を重要視するかを意味する概念」(123頁)です。もう一つの時間的焦点は、「人々が過去、現在、未来に対して注意を向ける程度」(123頁)を表します。

いずれも未来を肯定的に捉えることがその個人に対して肯定的な影響を与えることが明らかになっています。こうした点に着目して未来の自己連続性という概念の研究がその後に蓄積されています。

未来の自己連続性を実験操作する研究では、連続性を意識する条件ほど、貯金をしようとすること、定期的に運動をするようになること、学業成績が向上することなどが明らかにされています。つまり、未来の私は今の私の延長線上にあるという認識を高めると、よりよい未来を実現するための道筋がみえてきて、未来指向の行動が促されるのです。(127頁)

未来の自己連続性に関する研究結果からは、企業組織において行われる過去の振り返りから将来を展望し現在の職務でのアクションを計画するようなキャリアに関するワークショップの有効性も推察できるのではないでしょうか。過去・現在・未来を自身の中で統合して意味付けるための介入施策は、企業だけではなく学生を対象としても効果的であると述べられています。


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