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【論文レビュー】副業が本業に活きる条件とは?:石山(2018)

働き方改革やコロナ禍といった外的環境の変化によって、日本企業でも副業が認められるケースが増えてきています。とはいえ、労務管理上の問題や手間を鑑みた企業側の本音は、副業にはまだ否定的と言えるのではないでしょうか。

企業側の本音の前提には、副業での経験が本業におけるパフォーマンスにポジティヴな影響を与えないというものであり、趣味と同じなんじゃない?という点にあるでしょう。本論文はこの点に楔を打つものであり、副業が本業にポジティヴな影響を与えることを検証するとともに、その前提条件を提示する内容となっています。

石山恒貴. (2018). 副業を含む社外活動とジョブ・クラフティングの関係性: 本業に対する人材育成の効果の検討 (2017 年労働政策研究会議報告 非正規社員の処遇をめぐる政策課題)--(第 2 分科会 (組織と HRM)). 日本労働研究雑誌, 60(691), 82-92.

本論文の全体構造は下図の通りです。社外活動の種類・目的・性質が本業の行動にどのように影響を与えているのかを明らかにしています。本業の行動はジョブ・クラフティングで見ており、因子分析の結果として、その中でも仕事の改善に主体的に取り組むという改善ジョブ・クラフティングという結果変数として置いています。

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副業が本業に活きる条件(1)目的

明らかになったのは、副業をはじめとした社外活動において活動を通じて成長したいという目的があると、本業での行動にポジティヴな影響を与えるという点です。社会貢献や副収入といった目的も多くあると思いますが、本業でのパフォーマンスへの影響という点では活動での成長の期待のみが検証されています。

反対に、本業への不満やキャリア探索という目的での活動だと本業にマイナスの影響を与えているという結果も着目するべきでしょう。本業に対するネガティヴな心持ちや本業から逃避するための目的であれば、本業で自発的な工夫をしようと思わないのは当たり前といえば当たり前なのかもしれません。

副業が本業に活きる条件(2)性質

ではその活動の内容はどうでしょうか。本論文で明らかとなったのは、新しいスキルと試行錯誤を行うこと、および多様な人々との相互作用という二点が重要であることが明らかになりました。

本業というホームから離れた環境には、通常の職場環境とは異なる言葉が使われ、多様な人々とのやりとりが生じます。そうした環境の中で試行錯誤をしながら新しいスキルを発揮しようと取り組み、他者との多様な関わり合いをすることが、本業に帰った時に活きる経験となるようです。


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