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【読書メモ】霧の中の希望とキャリアの停滞:『働く人のキャリアの停滞』(山本寛編著、第4章・加藤一郎著)

第3章で扱われたキャリアの停滞について、霧と希望という言葉で詳しく述べられているのが本章です。キャリア・ミスト(霧)とはキャリアの将来に関する不透明感と定義されていて、停滞を感じる時を霧がかかっている状態としています。
※第3章のメモは以下にあります。

不透明感をおぼえるのはなぜでしょうか。その理由として、不透明ながらも将来に対して希望を見出しているからだとしています。つまり、キャリア・ミストが濃い状態の時には、キャリア・ホープが潜在的にあるものだとしているのです。希望があるからこそ、その希望が満たされない状態をもって霧がかかっていると私たちは捉えるのです。

では、霧を晴らすためにはどうすればいいのでしょうか。その一つの解として、キャリア・ホープを感じるべくキャリアの将来像を明らかにすることが重要であるというのが本章の主張です。

そのための具体的な処方箋としては、組織内でロールモデルを探し、自分と近しい状況をどのように乗り越えたのかを聞くことや、上司に将来のビジョンを聞くことなどが挙げられています。

しかし留意が必要なことがあります。人は相反する欲求を同時に持っている存在であるという考え方を著者は引いて、霧を晴らしたいという欲求がありながらも、しかし将来が見えすぎる状態も避けたいものであるとしています。私たちは、ひとりでいたい時もあれば、人と一緒にいたい時もあるという困った存在なのです。

こうした相反する意味づけをナラティヴの観点から著者は考察しています。キャリアでは回顧と展望ということが言われ、回顧、つまり過去の振り返りがまず大事であるとよく言われます。

この過去の振り返りこそ、ナラティヴ・アプローチに他ならないのです。同じ過去であっても、ポジティヴにストーリーづけすることもできればネガティヴに語ることもできます。個人として振り返る時にもそうですが、上司や人事が振り返りを促す際には、相手のナラティヴをいかにセンスするかが大事だと言えるでしょう。


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