見出し画像

【読書メモ】6章 楽観性(外山美樹著):『非認知能力』(小塩真司編著)

楽観性は、ポジティヴ心理学の流行で一般的にも注目されているようです。概念定義は主に三つあり、①ポジティヴな出来事は起こりやすいけどネガティヴなものは起こりづらいと認知する非現実的楽観性、②自分自身に起きた出来事をどのように習慣的に説明するのかという説明スタイル、③ポジティヴな結果を期待する傾向という特性的楽観性、です。本章では、研究蓄積が最も為されている③特性的楽観性について解説されています。

楽観性の影響

楽観性は、適応心身の健康にポジティヴな影響を与えるようです。これは直観的にもイメージしやすいでしょう。そのため、本書の14章で取り上げられるレジリエンスとも関連し、レジリエンスの構成概念の一つとしても扱われています。

こうした楽観性が与える影響の特徴は、アメリカの神学者ラインホルド・ニーバーが伝えたニーバーの祈りの一節にある三つの要素で説明ができるようです。以下からはその三つに基づいてまとめてみます。

①「変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気」

ストレスフルな事態に陥った時に選択するコーピングによって、楽観性は適応や心身の健康に影響するようです。楽観性が高い人は、ストレスを解決しようと前向きに取り組む接近的コーピングを用いてストレスを取り除こうとします。

②「変えることのできないものについて、それを受け入れるだけの心の平穏さ」

楽観性の高い人はあらゆる事態をポジティヴに捉えているのではありません。自分でコントロールできる事態とできない事態とがある場合、前者に対しては①の接近的コーピングで対応します。他方、後者については現実を受け容れ、問題を解決しようとするのではなく感情を管理するコーピングを使用することで対処します。

③「変えることのできるものと、変えることのできないものとを識別する知恵」

②とも関連しますが、楽観性が高い人は、コントロールできる事態とできない事態とを識別することができるようです。これは柔軟性が高いからで、前者に対して時間と労力を集中させて、①の接近的コーピングで問題解決に向かいます。

楽観性は成人でも開発可能

楽観性はおとなでも開発することが可能で、むしろこどもに対する介入の調査が少ないようです。ややハウツーに近いものが例示として挙げられていて、毎日五分間「こうなりたい」と願う自己について想像することを二週間行うエクササイズをすることで楽観性が高まる効果が出ているようです。

その結果として、適応や心身の健康に改善が見られた調査もあります。こどもに対する調査は少ないようですが、おとなへの介入の効果から十分に適用可能であると推察されるとのことでした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?