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【読書メモ】『人事こそ最強の経営戦略』(南和気著)

日系企業と外資系企業の人事部門で勤務してきましたが、本書がテーマとしているグローバル人事というキーワードやその内容は納得的です。ビジネス書を読むことはほとんどないのですが、直接面識がない方から「コンサルか研究者だと思っていた」と言われることが増えました(どちらも完全に間違いではありません)。事業会社の人事部門勤務のビジネスパーソンであり、日本企業のサラリーマンであることを伝えるためにも(?)本書を取り上げてみました。

グローバル人事

本書は企業における人事に関してリアリティのある記述が特徴だと感じました。その理由として数社での事例が書かれていることもあるのですが、人事の機能を順番に説明するのではなくグローバル人事を説明の軸にしてそこで求められる要素として機能を語っているという点があるのではないでしょうか。

さらに言えば、グローバル人事が求められる背景には経営イシューとの接続があります。つまり、経営を語り、経営のパートナーとして、グローバル人事という役割を論じているために読み手がイメージしやすく理解できるのだと考えられます。そのような意味では、人事パーソンだけではなく、企業経営において人という重要な要素のありようを考えたい方は本書を手に取ってみると良いでしょう。

グローバル人事のための三つの課題

触りだけまとめますと、著者はグローバル人事に挑戦する日本企業にとって以下の三つの課題があるとしています。

①結果人事から計画人事へ
②主観人事から客観人事へ
③密室人事から透明人事へ

p.46(表現は引用者が一部修正)

①②は人事の世界でよく言われるものなのでなんとなくイメージできたものの、興味深いのは③です。もう少しだけ補足すると以下のように著者は説明してくださっています。

【密室人事】上司や人事への信頼に頼る
評価や処遇がどのようなプロセスに基づいて決定されるのか、また評価結果そのものも社員本人に公表されない。配属や処遇についても、暗黙のルールが多く社員に説明されない。

【透明人事】評価の仕組みへの信頼に頼る
評価や処遇の決定プロセスが公開され、評価結果やその理由が社員本人に公開される。処遇そのものの決定は管理職や人事部によって行われるが、ルールは社員に説明される。

p.47(表現は引用者が一部修正)

日本企業において密室人事が成立した背景には、経営や人事だけの問題ではなく、現場や管理職が人の課題解決を人事に依存していたという共犯関係にあったこともあると思います。極端な状況としては、現場マネジャーは表立っては文句も言わずに成果を出して「人事は何もわかっていない」と愚痴を言って溜飲を下げ、人事は現場を訪れることもなく経営イシューという錦の御旗で制度を作って現場に落とす、という笑えない状況がもしかしたら存在したのかもしれません(フィクションです、念のため)。

制度を公開し現場で活用できるようにする透明人事においては、人事が現場で説明責任を果たし続ける必要があります。そのために、昨今ではビジネスパートナー人事(HRBP)の重要性が日本企業でも増してきているのでしょう。

勇気をもらえる一文

このように書いてみると、グローバル人事へと変革していくのは大変だという印象を持たれるかもしれません。しかし著者は本書の冒頭で以下のような勇気をくれる一文を書かれています。

実際に正しい方法でやってみると、実は日本企業ほどグローバル人事に向いている企業はないというのが、私自身の実感です。

p.4

外資でも日系でもグローバル人事に携わって来られた方の言葉は、日本企業で働く私たちがグローバル人事へと変革していく上でとても勇気づけられます。

最後まで目を通していただき、ありがとうございました!


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