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【読書メモ】8章 情動知能(野崎優樹著):『非認知能力』(小塩真司編著)

情動知能(emotional intelligence)は、IQと対比したEQと呼ばれる概念で1990年代からよく知られている概念です。さまざまな心理的・身体的・社会的な適応の高さと結びつくことが示されているため、教育現場でも企業組織でも着目されていると言えます。

情動知能の構成要素

情動知能は四つの下位要素から構成されるとする情動知能の四枝モデルが提唱されています。四つの要素は以下の通りです。(以下135頁からの引用)

情動の知覚
自他の情動を同定し、正確に表現する能力

情動の利用による思考の促進
判断や記憶の助けとなるような情動を生み出す能力

情動の理解
情動がもつ特性や、情動と状況との結びつき、混合情動などの複雑な情動を理解する能力

情動の管理
望ましい結果に向けて、自他の情動を効果的に調整する能力

情動知能と適応指標との関係性

情動知能は適応指標と関連することが多いということが基礎研究でわかっているようです。中でも、適応指標の代表的な一つである主観的幸福感との関係性について詳細な解説がなされ、情動知能と幸福感とが強い相関を示していることが紹介されています。

情動知能の高さが幸福感の高さに影響する背景には、日々の生活における情動調整方略、つまり情動を自身で意識的にコントロールすることが関係しています。情動知能の高い人ほど、たとえば、「望ましくない情動を引き起こしている原因を解決する「問題解決」、他者に助けを求める「援助要請」、別の視点から望ましくない情動を引き起こしている出来事を捉え直す「再評価」」(140頁)といった情動調整方略を多く用いているようです。

他にも、健康、学業成績、勤務成績、職務満足度、などといった適応指標と情動知能は関係があることが基礎研究の結果として明らかになっています。

情動知能を伸ばすための介入施策

情動知能は後天的に伸ばすことができるものであり、学校教育でも大学生以降の成人への教育でも有効であるようです。

まず学校教育については、イエール大学で行われているRULERという取り組みによって情動知能や社会性を教育することが明らかにされています。RULERは以下の五つの単語の頭文字を並べてものです。

Recognizing(認識)
Understanding(理解)
Labeling(ラベル付け)
Expressing(表現)
Regulating(調整)

また成人になってからも開発可能なものであり、日本でも大学教育や看護師を対象としたプログラムでの実践例で効果が検証されています。


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