【論文レビュー】インクルージョン風土とは何か?:Nishii(2013)
職場における属性や価値観などにおける多様性が大事であるということがよく言われるようになりました。本論文では、インクルージョン風土(climate for inclusion)を測定する尺度を開発し、このインクルージョン風土が職場における様々な要素にどのようなポジティヴな影響を与えるのかを検証しています。
インクルージョン風土
インクルージョン風土は、以下の三つの下位次元から構成されるとしています。
①公平な雇用慣行の基盤(Foundation of equitable employment practices)
偏見を排除するための公平な雇用慣行と多様化に特化した慣行の基盤。
②差異の統合(Integration of differences)
職場における多様な従業員の対人関係における統合。
③意思決定への参加(Inclusion in decision making)
従業員の多様な視点が積極的に取り入れられ統合されること。
測定尺度
本研究ではまずCIを測定する尺度を開発しています。31設問のものと、15設問の短縮版の二つがあります。短縮版は下表の太字になっているものです。
論文内にはモデル適合度も詳しく書かれており、両バージョンともに適合度の問題はなさそうです。比較すると31設問の方が少しだけ適合度が良いようですが、短縮版も全く問題ない値と考えられます。ですので、31設問でも15設問でも上述した三つの下位次元で構成されることが検証されたといえるでしょう。
結果変数との関係性
こうしてインクルージョン風土の尺度を検証した後に著者は、インクルージョン風土がどのようなものに影響を与えているのかについて分析を行っています。具体的には四つの点が明らかになったと報告しています。
インクルージョン風土がジェンダー多様性による対立を減少させ、職場単位の満足度が向上する。
インクルージョン風土は、関係性コンフリクトが満足度に与えるネガティヴな影響を緩和する。
インクルージョン風土は、タスクコンフリクトを低減させる。
インクルージョン風土は職場単位の満足度を高め、離職率を低下させる。
最後まで目を通していただき、ありがとうございました!