【読書メモ】『リーダーシップ・シフト 全員活躍チームをつくるシェアド・リーダーシップ』(堀尾志保・中原淳著)
研究室の先輩と指導教員の先生との共著という、中原研で学ぶ身として胸熱な一冊です。堀尾さんのゼミでのご発表でシェアド・リーダーシップ(shared leadership)という概念についてはおぼろげながら理解していたつもりでしたが、事例が豊富でポイントを噛み砕いて説明してくれる本書は、マネジメント実務に携わる人間として身に沁みる内容でした。マネジメントに携わる方々はもとより、職制に関わらず他者に影響を与えて協働しながら仕事を進める全ての方にとって示唆に富んだシェアド・リーダーシップ入門書と言えそうです。
マネジャー受難の時代
冒頭ではマネジャーを取り巻く環境変化が書かれています。これが共感しまくりの内容なのですよね。五つの言葉に集約されていて、序章の内容から引用すると以下のようにまとめられます。
濃淡はあるもののいずれも共感できます。部門でパフォーマンスが充分に発揮されないと、マネジメントがその責任を負うケースが多いと思います。もちろん、非管理職と比べて重い役割を担い、その対価としての権限と報酬をいただくので責任を担うのは当然ではあります。
ただ、マネジメントに全てを任せてしまうと部門で価値を創出することは難解です。というのも、上のリストを見ていただくとわかるように、マネジメントを取り巻く環境の難易度そのものが上がっているからです。
シェアド・リーダーシップ
役割の違いはあっても、マネジャーもチームを構成するメンバーの一人にすぎません。つまり、チーム全体でチームの目標達成に向けて協働することが重要になってきます。そこで登場するのがシェアド・リーダーシップという考え方です。
シェアド・リーダーシップが実現しているチームでは、メンバー全員がお互いに影響し合うことでチームとしての成果を共創しています。共創や協働という状態からするとマネジャーがメンバーと変わらない役割になると誤解されるかもしれませんが、そのようなことはありません。本書でも、マネジャーに求められる役割が変わるとして以下のように書かれています。
ここで本書のタイトルであるリーダーシップ・シフトとつながってきます。
シェアド・リーダーシップの5つのステップ
では、従来のリーダーシップのあり方から、シェアド・リーダーシップのあり方へとどのようにシフト(変化)するのでしょうか。本書では5つのステップに分けて解説してくれています。
本書では、各ステップについて章を分けて丁寧に説明がなされ、ノウハウに落とし込んだ上で具体例がふんだんに紹介されています。あまりネタバレになってはまずいので、特に印象に残ったステップ3について少しだけ紹介します。
丸投げと共創は異なる!
ステップ3が興味深かったのは、私が数年前に失敗した経験がリフレインされたからかもしれません。私の場合は方針を上から落とすというのが好きではなく、ともに方針を描くということが元々好むタイプです。そのため、「ともに方針を描く」ことは、ゼロからメンバーと一緒に方針を創るものなのだと当時は思っていたのだと思います。
ところがそれは誤解なんですよね。当時は反省して修正して対応した記憶があるのですが、以下のステップ3のポイントを読んで腑に落ちました。
これは痺れましたね。マネジャーが何もしないのは責任放棄になってしまい、役割としてこれらを行うことの重要性をよく理解できました。実際、できるマネジャーの言動を思い返すとこれらを行っているように思います。
本書を読んでいると、自身の職場でのリーダーシップについて内省させられると共に、今後の一歩に向けての示唆を得られます。シェアド・リーダーシップなチームのメンバーとして働いていきたい方は、ぜひ本書を紐解いてみてください。
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