【読書メモ】リーダーシップ研究の第一人者による、リーダーシップ研究史のまとめがスゴイ!:『リーダーシップの理論』(石川淳著)
積読状態になっていた『リーダーシップの理論』(石川先生、ゴメンナサイ)を、あるきっかけにより読みました。特に第2章の「120年の研究を一気に読むーリーダーシップ研究の流れ」がむちゃくちゃ面白いので、ポイントをまとめてみます。
19世紀までの組織においては、マネジャーの経験や勘によって組織のマネジメントが機能してきたため、マネジメント研究に焦点が当たることはなかったと著者はしています。その上で、マネジャーの違いによって組織のパフォーマンスが大きく異なるようになってきた20世紀初頭から、マネジメントおよびリーダーシップ研究が為されるようになったとして、それ以降の時代区分を六つに分けて整理されています。
(1)1900-20年代
それまで現場において有効だった経験や勘を理論として整理することでマネジメント研究が開始された時期です。有名なテイラーによる科学的管理法がその一つです。この時期においては、優れた現場のマネジメント実践知の理論化が研究の焦点にあたっていて、マネジメントとリーダーシップとは類別されていません。
(2)1930-40年代
科学的に現場のマネジャーの役割が明確にされたにも関わらず、成果を上げることができるマネジャーとそうでないマネジャーとがなぜ生じるのかという疑問が生じるようになりました。マネジャーという役割による強制力に基づく影響力の限界を意味し、マネジメントの機能と、リーダーシップの機能とが意味的に分かれ、リーダーシップを発揮する人材の資質に焦点が当たるようになりました。
(3)1950-60年代
この時代には、第二次大戦後の経済復興により、人々の生活が豊かになったことにより、労働者の人間的な側面が重視されるようになったという社会的背景がリーダーシップ研究にも影響しています。具体的には、外的報酬の管理によるマネジメントだけでは機能しなくなりました。
人間的な側面が重視されることで、リーダーだけに焦点が当たっていた状態から、フォロワーを含めた職場全体の人々へと研究対象が広がりました。その結果、フォロワーに影響を与えるものはリーダーの資質というよりも行動こそが大事である、というように行動論に焦点が移りました。
リーダーシップ行動を扱う中で、職務遂行そのものに影響を与えるだけではなく、集団維持機能に影響を与える行動に焦点が当たるようになり、組織内の人間関係や感情にも着目されるようになりました。
(4)1970-80年代
まず社会的背景として、労働者に占めるホワイトカラーの割合が高まったことにより、集団としての労働者ではなく個々の人間としての労働者に焦点が当たるようになったことが挙げられています。そのような時代背景において、心理学、社会学、文化人類学といった学際的な分野から人間の行動を研究する行動科学の知見からマネジメント研究が行われるようになりました。
その中で、リーダーシップ研究においては、リーダーと個々のフォロワーとの関係性が職場パフォーマンスに対して調整効果を持つことが明らかになりました。状況対応理論ではフォロワーの成熟度によってリーダーシップ行動を変容させることが有効であるとするなど、個々の状況や人に合わせたリーダーシップ行動の効果性が検証されるようになりました。
(5)1990年代
リストラクチャリングやM&Aが行われるようになった時代において、企業間競争に対応し大胆な変革を成し遂げるリーダーシップ論が求められるようになりました。カリスマ型リーダーシップや変革型リーダーシップがその典型と言えます。
こうしたリーダーシップ論は、グローバリゼーションが進展する中で、さまざまな国や文化を超えて有効であることが検証され、グローバルなリーダーが求められるようになった社会的要請に対応してきたとも言えます。
(6)2000年以降
変革の時代という点ではそれ以前から踏襲しながらも、VUCAといった恒常的な変化に対応することが求められるようになり、マネジメントが対応する現象が多様で複雑になりました。その結果、画一的な変革型リーダーシップやカリスマ型リーダーシップは、2000年代初頭のエンロン事件などを契機に見直しが求められ、倫理に焦点を当てたリーダーシップ研究が進展しています。
また、ビジネスの複雑性は職場の複雑性をも意味するため、一人のリーダーという存在を疑問視し、複数のリーダーによるリーダーシップ研究が展開されるようになりました。石川先生の他の書籍にもあるようにシェアド・リーダーシップが提唱されるようになったのもこの時期です。
シェアド・リーダーシップを理解されたい方は、ぜひ以下の書籍も手に取ってみてください。
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