【論文レビュー】ジョブ・クラフティング研究の最新動向:Tims et al.(2021)
本論文は、ジョブ・クラフティング(以下JC)に関する2016年から2021年に出版された論文を対象とした最新のレビュー論文です。JC研究の最新のトレンドを把握する上ではうってつけの存在と言えます。昨日、ざっと目を通しただけの状態で早合点した内容をtwitterで呟いてしまったことを反省し、まとまった文章にしてみました。フィードバックくださった高尾先生、どうもありがとうございました!
最新のJC研究の六つの傾向性
最新のJC研究の全体像は以下の図にまとまっています。概要を理解したり、興味・関心に合わせて読み込む領域を見定めるのに明瞭簡潔なまとめです。
三つのレベルを直訳すれば、個人、チーム、社会となるのですが、この社会というレベルは、本論文を読めば分かるように社会的関係(social relations)に関するJCの研究領域であり、いわゆる日本語の語感でイメージする「社会」ではありませんので要注意です。ここを早とちりしたのが昨日の私です(スミマセン)。
三つのレベルにそれぞれ二つの傾向があり、合計六つの傾向があると著者たちはしています。それぞれポイントをみていきます。
【傾向1】JCをより深く理解するための探索
回避(avoidance)型と接近(approach)型のJCの効果検証が多いようです。個人のウェルビーイングを守るために時には回避型が有効な時があったり、資源強化や獲得のために接近型が重要であるといった研究領域です。
【傾向2】新しい形式のJCの提示
Wrzesniewski & Dutton(2001)が提示したオリジナルのJCでは三つの次元(タスク、関係性、認識)が提示されていました。最新のJC研究では、これらに加えて新たなJCが提示されています。
いくつか出ているもののうち、キャリア・クラフティング(career crafting)については私自身の関心領域と近いのでちょっと調べないとなと思っています。
【傾向3】共同型JCへの個人・チーム成果への関心の再興
共同型JCによる個人の仕事への成果についての検証が為されています。チームプレイヤーとしての行動をはじめとしたチームの要素の重要性が明らかになってきています。
【傾向4】共同型JCのための社会的相互作用と関係の重要性
チーム内での開放的で信頼できる関係性の促進とチームメンバー・リーダー・関係者間の社会的相互作用が共同型JCが機能するために重要であることが検証されています。
【傾向5】社会的環境への個人的JCの埋め込み
同僚、上司、リーダーといった他者からの支援によって個人的JCがどのように促されるかといった研究群です。それとともに、個人のJCによる他者のJCへの影響についても研究蓄積が為されています。
【傾向6】他者からの観察によるJCの効果
JC行動を同僚や上司によって観察、反応されることによって、JCを行った人物のウェルビーイングや職務パフォーマンスに影響することも研究の対象となっています。
あとがき
まじめに読み直して書いてみましたが、いかがでしたでしょうか。JCについては、修論で扱って以降はほとんど読んでいなかったのでだいぶ勘が鈍った印象です。先行研究を続けることって大事ですね(汗)。まじめに読んでいた際に書き溜めたnoteを以下にまとめていますので、ご関心のある方はご笑覧ください。
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