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【読書メモ】濃密なデータを収集する:『グラウンデッド・セオリーの構築』(K・シャーマズ著)[第2章]

第2章では、現場に入って観察する際のデータ収集と扱い方について、グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)がもたらした効用が解説されています。

エスノグラフィーとは「ある特定のグループの生活を記録すること」(38頁)です。生活を記録するためには長い期間にわたる関与が必要とされるため、四つの課題があったと著者は46頁でまとめています。

(1)研究参加者の視点を無批判に取り入れることに対する批判
(2)長期にわたり、焦点の定まらないまま研究フィールドに首を突っ込むこと
(3)表層的で無原則なデータ収集
(4)ありきたりな専門領域のカテゴリーへの依存

GTAは絶えざる比較による分析アプローチを取るためにこれらの課題を解決できると著者はしています。具体的には三つの特徴として45頁で解説しています。

(1)データ収集が終わってからではなく、調査の開始時からデータとデータの比較をすること
(2)データと創発するカテゴリーを比較すること
(3)概念とカテゴリーの間の関係を示すこと

GTAが何をもたらしたのかについて熱く語られている章でした。上記の(1)と関連しますが、従来はデータ収集と考察とが分離されていたのに対して、GTAによってデータ収集の時点からデータ比較による考察ができる、という点がいいなと感じます。フィールドでの実践と研究を同時進行できるのは、実務にとってありがたいアプローチに思えます。


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