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マッキンゼーの人材・組織レポートから読み取れること(2022年6月28日記事)

最近は、政府統計やコンサルの調査データを意識的にチェックするようにしています。マッキンゼーが人材・組織の領域で最近出したレポートがなかなか面白かったのでご紹介します。

職務満足と外的報酬との関係性は低い

16,000人以上の勤務者を対象としたマッキンゼーの調査では、職場での良好な対人関係と興味深い職務に携われていることが職務満足の約20%を説明できるのに対して、外的報酬は約4%しか説明できないとしています。興味深いのは、調査対象者はあらゆる職位・報酬レンジの勤務者であることをマッキンゼーは強調しています。

つまり、職位や報酬が高い人材が上記のようなことを述べているのではなく、相対的に職位や報酬に満足していない群も同じであるというのです。かつてのマズローの欲求階層説に依拠すれば、給与が一定レベルより低い群は外的報酬によって満足度を説明できるはずなのですがそうではないとしているのです。

有能感と仕事の意味性が課題

では、職位・報酬の高群と低群とでは満足感に差異はないのでしょうか。結論から言えば、特定の要素において大きな差があるとしています。

上表によれば、有能感(competence)仕事の意味性(meaning)の二つの要素においてギャップが生じています。低所得者層においてこれらの二つの観点でのスコアが低い状態は何をもたらすのでしょうか。

職務不満足が離職を促す度合いは向上

コロナ禍の影響もあり、直近の雇用環境では、従来から言われていた職務不満足による離職への影響が以前よりも高まっていると本調査では指摘されています。これは、アメリカでも他の先進諸国でも同様であるとマッキンゼーは説明しているので、日本も同様と考えるべきでしょう。

職務への満足度に影響する要素として、低所得者層において有能感と仕事の意味性が特に大きいことは先述の通りです。これらのギャップを放置してしまうと、社員の意図せざる離職につながるリスクがあるのです。

心理的満足感をマネジャーがケアすることが大事

こうした課題への処方箋として、低所得者群に対してマネジャーが心理的満足感をケアすることが大事であると本調査では結論づけています。その上で、具体的に五つの点を指摘しています。

  1. 有能感の認知(Recognize competence)
    職務遂行に対して感謝し、強みをフィードバックする。

  2. 自律性の付与(Grant autonomy)
    エンパワメントを行い、メンバーの意見を傾聴する。

  3. 関係性の構築(Build connections)
    定期的なミーティングを設定し、メンバーが社交的なコミュニケーションに時間を割くことを認める。

  4. 仕事への意味の付与(Instill meaning)
    仕事の背景にある意味や理由を伝え、仕事の興味深い点に焦点を当てる。

  5. 目的の語り合い(Discuss purpose)
    個人の仕事の先にある組織・会社にとっての目的を話し合う。

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