【論文レビュー】カウンセリングの考え方とアプローチを論文で学んでみた:平木(2021)
カウンセリングや心理療法と呼ばれる手法は、発展しながら分化することで「理論・技法の氾濫による冷戦と単一理論による実践の限界」(p.50)が現れる状況になったと著者はしています。この課題に対するアプローチとして、様々な手法を整理・統合する動きを経て、1990年後半からは社会構成主義の認識論に基づく多元的アプローチが展開されるようになってきたとしています。
哲学的基礎
この多元的アプローチという考え方について著者は、哲学的基礎と心理学的基礎とに分けて説明を試みています。
まず哲学的基礎としては、冒頭でも挙げた社会構成主義という認識論があります。人によって何を以て善とするかは異なるものであり、さらにはプラグマティズムにも言及されていることから、目的によって価値は異なることが指摘されていると読み取れます。こうして、なんらかの唯一の手法を拠り所にする一元的なアプローチではなく、多元的アプローチが目的に即して効果的であるという考え方が取られていると考えられます。
心理学的基礎
次に多元的アプローチの心理学的基礎について見てみましょう。
心理学的基礎としては、多様な自己像、アイデンティティの複雑性、相互作用の連関における社会的存在、といった捉え方に対する多元的アプローチが考えられていることが読み取れるのではないでしょうか。
心理療法者とクライエントとの関係
こうした多元的アプローチにおいて心理療法者とクライエントとの関係性は、医者が患者の治癒に介入するような関係性とは異なるものであると著者は指摘します。
この辺りの関係性は、サビカス先生のキャリア・カウンセリングにおける理論であるキャリア構築理論の共構築を想起させるものがあります。
社会構成主義を基盤とするキャリア構築理論を理解する上で大変参考になる論文でした。
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