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【読書メモ】働く人のためのエンプロイアビリティの意義:『働く人のためのエンプロイアビリティ』(山本寛著)序章

エンプロイアビリティという言葉は、人事界隈のビジネスシーンではそれなりに使われるものの、日本での研究は多くない印象です。そのため、先行研究をレビューする上では英語の文献に当たることがほとんどでした。ただ、山本先生の論文を先日読んだので、もしかしたら書籍も書かれているかも!?と探してみたら、ありました!和文で専門書に近い体裁で書かれている書籍は本当にありがたいです。

なぜエンプロイアビリティが大事なのか

エンプロイアビリティの現代的な意義は、やはりVUCAと呼ばれる予測不可能で変化の激しい時代背景にあります。エンプロイアビリティは、VUCAの時代において私たちが雇用関係において柔軟に対応することを射程においた概念であると言えます。

柔軟な対応をする観点としては、①個人、②組織、③個人と組織の相互作用、という三つのものがあると山本先生は述べていらっしゃいます。

①個人の観点

個人の観点はキャリアと関連します。環境が変化すれば、それに対応するために自身のキャリア開発も柔軟に変化することが求められます。柔軟に対応しながら雇用関係を統制しようとするものが、個人の観点からのエンプロイアビリティという意味合いになります。

②組織の観点

日本の人事実務では、組織の観点で捉えたエンプロイアビリティが主だったものだったと言えます。というのも、組織が個人の雇用を終身的に保障するという時代から、雇用の保障ではなく他社でも雇用され得る能力の獲得を支援するという意味合いでのエンプロイアビリティが2000年前後から敷衍したからです。

③個人と組織の相互作用の観点

①個人と②組織のそれぞれの観点でのエンプロイアビリティを見てきました。両者を統合すると、いわゆる雇用のミス・マッチという論点が浮上します。どちらが一方に課題があるというよりも、両者の相互作用の結果として生じるミス・マッチを防ぐという観点からもエンプロイアビリティを論じることは可能と言えそうです。

こうして並べてみますと、②と③はこれまでも人事界隈では言われてきたものに思えますが、個人の観点でのエンプロイアビリティもキャリア自律が一般化する中で重要な捉え方になってきているのかもしれません。あくまで個人的な印象ではありますが。


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