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【読書メモ】理論と実践(2)心理療法・組織変革・教育・研究:『あなたへの社会構成主義』(ケネス・J・ガーゲン著)[第7章]

本章では、社会構成主義を基にした実践として、心理療法、組織変革、教育・研究が取り上げられています。従来のアプローチとは異なる、社会構成主義が基底にあるからこその実践事例についてわかりやすく解説がなされています。

社会構成主義における心理療法

伝統的な心理療法においては、感情という存在は解決するべき課題とみなされることが多いようです。抑うつ、DV、ハラスメントなどを例示すればイメージできるかと思いますが、いずれも感情は解決すべき問題の源です。

しかし社会構成主義においては、「「感情」は、調べるべき「事実」ではなく、あくまで会話の対象」(250頁)と捉えられ、ニュートラルな存在として位置付けられています。つまり、カウンセラーとクライエントとがお互いに取り組むべき対象に過ぎず、その話題を取り上げることによって、両者のオープンな態度による生成的な対話が生み出されるものになります。

また、ある感情を生み出した多様な背景に着目をします。ある現実を構成する多様な背景に意識を傾け、特定の状況の背景にある多声性を重視するアプローチと捉えられます。

社会構成主義における組織変革

心理療法というカウンセラーとクライエントという一対一の関係は、組織という複数のメンバーが織りなす関係性においても基本的には近いものがあるようです。各人の多声性と多様なメンバーが織りなす複雑性を組織として力に変えていくための手段として、デビッド・クーパーライダーらのAppreciative Inquiry(AI)が紹介されています。

AIでは、他者の価値を認める問いを基に対話を繰り返すことで、組織としての価値を表出し、未来を探究しながらチームを生成的に構築することが目指されます。


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